17 / 64

第17話

アパートのドアを開けると、アルコールの臭いが鼻をつく。 狭い部屋に、たくさんの空き缶が転がっている。 「んぁー.......帰ったの、冬夜ぁ」 「...」 いたのかよ....、クソ。 その空き缶に囲まれ、一人机に突っ伏す女。 この女は一応母親だ。 でも、正直言ってそんなこと微塵も思ってない。 「...」 男を連れ込み身体を売って、その金でアルコールを身体の中に注ぐ。 そんな生活を繰り返しているバカなヤツ。 俺は訳わかんねえ事を言ってくる女を無視し、必要な物だけ持って家を出る。 アルコールの臭いが身体にこびりつき、岬圭一のあの匂いが掻き消えた気がして、ほんの少し胸が苦しくなった。 「...ふん」 あんなのに構ってられない。 ピロン、と携帯から通知音が鳴って、開くと岬圭一から『家に入った?おやすみ』とメッセージが入っていた。 「...家?.......そんなもんねぇわ」 そのメッセージを無視し、夜の街へと歩き出す。 岬圭一が、嫌いだと思った。

ともだちにシェアしよう!