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第17話
アパートのドアを開けると、アルコールの臭いが鼻をつく。
狭い部屋に、たくさんの空き缶が転がっている。
「んぁー.......帰ったの、冬夜ぁ」
「...」
いたのかよ....、クソ。
その空き缶に囲まれ、一人机に突っ伏す女。
この女は一応母親だ。
でも、正直言ってそんなこと微塵も思ってない。
「...」
男を連れ込み身体を売って、その金でアルコールを身体の中に注ぐ。
そんな生活を繰り返しているバカなヤツ。
俺は訳わかんねえ事を言ってくる女を無視し、必要な物だけ持って家を出る。
アルコールの臭いが身体にこびりつき、岬圭一のあの匂いが掻き消えた気がして、ほんの少し胸が苦しくなった。
「...ふん」
あんなのに構ってられない。
ピロン、と携帯から通知音が鳴って、開くと岬圭一から『家に入った?おやすみ』とメッセージが入っていた。
「...家?.......そんなもんねぇわ」
そのメッセージを無視し、夜の街へと歩き出す。
岬圭一が、嫌いだと思った。
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