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第20話
朝起きて、学校に行く。
毎日同じような日々だと思っていたけど、今日は違う。
頭を抱えたくなるようなタネが頭の中をかすめる。
......岬圭一。
「眠いよぉ、死にそう......」
横でグダグダと愚痴を吐く優介の髪は、まだボサボサだ。
「髪やべえことになってっぞ」
「ああー、冬夜、直して」
「は?自分でやれよ」
「冷たーあい」
シクシクと泣く真似をする優介を一瞥して、校舎の中に入った。
上靴を履き替えて廊下を歩いていると、優介から信じられない話を聞く。
「そういえばさ、明日香ちゃんが臨時で休むって、何があったんだろうね」
「っ......え?嘘だろ?」
「えー、昨日の全校集会で言ってたじゃん!聞いてなかったの?」
昨日は岬圭一の件で手一杯だったから...なんて言えない。
「そういえば.......なんか知ってるか?」
「ダメ。分かんない。体調でも崩したのかなあ?」
明日香ちゃん、もとい三田村明日香先生は、俺が入学してからお世話になった保健医だ。
ストレートの長い黒髪に、真ん丸な目、美人な顔立ち。
寝不足気味の時は『顔色悪い!休んでけ!』と保健室で内緒で休ませてくれた、姉御肌な人。
俺にとっては女の中で一番マシなのは三田村先生なのかもしれない。
なのに、急に...?
臨時で代わる予定だとは聞いていない。
やっぱり三田村先生に何かあったのか...?
「新しく来た先生に聞いてみれば?」
優介が提案してくれる。
「誰だっけ、みさ.......?先生?........みさちゃんにさ!」
み、みさちゃん......!
「ぶっ、...みさちゃんって....だせぇ、..........そうだな」
優介がアイツに付けたあだ名に、思わず吹き出してしまう。
...関わりたくないけど、三田村先生のことは聞いておきたい。
昼休みに聞きに行くとするか。
昼休み、俺は保健室に来ていた。
「入るぞ」
ガラガラ、と開けると中には女子が沢山いて、岬圭一を取り囲んでいた。
「先生ー、膝擦りむいちゃってぇ...」
「私もー!」
「私は熱があるかもー!」
あーあー、うっせえの。
お前ら全員仮病だろ!
「ちょっと待ってね、絆創膏貼っとこうか」
「熱、計ろうね」
岬圭一は笑いながら甲斐甲斐しく看病している。
......何なのこれ。
いや、見たら分かるだろ、コイツら怪我や体調不良装ってお前に診てもらいたいだけだろ。
三田村先生の時は全然来なかったくせに。
男は何かと理由をつけて保健室に来てたけどな。
「おい、話あるんだけど」
「ちょ、あ、冬.......佐々木くん、ちょ、ちょっと待っててね!」
今冬夜って言おうとしてたな。
やっとこっちに気づいて慌てる岬圭一にイライラが募る。
女子の発する黄色い声にうんざりして、俺は奥のベットに寝っ転がった。
キャーキャーうるさい声に耳を塞ぎ布団に潜ると、ベットに寝たせいか、瞼がゆっくりと落ちてきた。
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