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第21話
「...きて、......起きて、冬夜」
「...んー....」
暖かくてふかふか。
あの頃みたいな、優しい温もり.......。
「........お母さ...?」
揺さぶってくる手を抱き寄せて、温もりを堪能する。
「冬夜、冬夜──────」
........ん?違う?
「子猫ちゃん起きて、キスしちゃうよ」
「ぅひっ!」
耳元で囁かれ、飛び起きる。
「起きたかー、残念」
「なっ、何が残念だっ、びっくりしただろ!」
「まあまあ、そんなに怒らないでよー。.........俺に用事があるんだよね?」
はっ、そうだった。
「岬圭一は三田村先生のこと知ってんのか?」
「三田村先生?というより、俺のことフルネームで呼ぶの?」
うっせ。
「三田村先生が休んでる理由を聞きたい」
「休んでる理由ねぇ...俺も電話でお願いされただけだし、よく分かんないんだよ」
「知り合いかよ」
「うん、一応大学の同級生だよ」
「ふーん」
まあ、多分怪我とかじゃ無さそうだから大丈夫だろう...。
電話とはいえ、お願いされたんだし。
「......ね、冬夜」
「なんだよ」
考え事をしてんだから話しかけてくんなよ。
「ねぇ........」
「.......」
「ねぇ、名前で呼んでよ」
何を言うかと思えば、この男は......。
ギシ......と身体の横に手を突かれ、ベットが軋む。
俺との距離が、近くなる。
この体勢は、あの時の失態を思い出しそうで嫌だ。
「ヤダ」
顔が赤くなるのを見られたくなくて、視線から逃れるように横を向く。
ええーっ、と言われても。
そんなの、.......呼ぶかよ。
........こっちは三田村先生が心配だってのに。
「あ、てか今何時だよ」
岬圭一の胸を押し返して、時間を確認しようとベットから脚を下ろすと、
ちょうど予鈴が鳴った。
「え、嘘だろ、もう昼休み終わったのかよ…....」
「うん、みたいだねぇ」
「みたいだねえ、じゃねえよ。なんで起こさなかったんだよ、クソッ」
慌てて起き上がってクラスへと走った。
「だって........疲れてそうな顔してたんだよ」
ドアを出る時岬圭一が呟いた言葉は、聞こえないふりをした。
「っはぁ、はぁっ......あー、間に合った」
「おお、めっちゃ走ってきたねー、大丈夫?」
「ん、ああ。さっきちょっと寝たからな」
大丈夫かい、と面白そうに聞いてくる優介に応えながら、なんとなく思う。
そういえば、少しだけだがスッキリした気がする。
......アイツ、わざと起こさなかったのか…?
......別に、疲れてねえよ。
「おし、席着けー。授業やるぞ」
担任の仁科先生が来て、俺は考え事をやめた。
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