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第30話
俺は今、何をしてるんだろう。
「はあー...よかったあ、嬉しいな」
思わず了解しちゃったよね…?
「冬夜、好きだよ」
無理やりヤられたのに!?
っまあ、気持ちよかったけど!?
「離せ...」
「だーめ」
さっきまでの反省はどこへ!?
ギューッと抱きしめられ、頭を撫でられる。
「っ!?」
「あ、また勃ってる」
「さっ、触んなっ」
「はーい」
腕の中で藻掻くが、一向に離してくれる気配がない。
顔が熱いのは、密着されて暑苦しいからだ。
「.......」
ふわ、とまたいい匂いがして、岬圭一の胸にそっと顔を埋める。
「......匂い、好きなの?」
「別に。安心するだけ」
多分匂いのせい。
瞼が重くなるのは、そのせい。
「違う...ちがう、」
「はいはい」
俺は眠気に負けて、目を閉じた。
「....ざわざありがとうご...」
「...や、気に...、それより冬夜は?」
ボソボソと聞こえる声に混じっていた自分の名前で完全に目が覚めた。
「よー、冬夜」
「っ!?じょ、丈さん!?」
ひょっこり顔を出した丈さんに、びっくりして起き上がる。
「っあ、」
「おっと....寝起きで跳ね起きんなよ」
揺らいだ視界に、倒れそうになったのだと知る。
「あ、ありがと」
「いーえ」
がっしりした腕が、支えてくれる。
...どこでそんなに筋肉が付いたんだか。
「佐々木くん、起きた?今ちょうど七時だよ」
騒ぎを聞いてか、隣にいたであろう岬が顔を出す。
「こいつ、体調の方は」
「あぁ、寝た時熱が少しありましたからね。計っておいた方がいいでしょう」
っ気まずい!
丈さんの腕から離れると、後ろに隠れるようにしてついて行く。
「はい、佐々木くん、体温計」
...うわ、何してるのって顔してる...。
「あ、ありがとうございま...」
こっわ。
...もしかしたら、いや、もしかしなくても。
岬ってかなりの拘束野郎なのかもしれない。
「...」
っま、なにも言わないから大丈夫だと思うけど。
「あ、それ...」
どうして丈さんが?と思ったら、近くに白衣の入った紙袋を見つけた。
「ああ、俺が持ってきた。お前、電話かけたけど出なかったから」
「う、嘘...悪い」
「疲れて寝てたんだろ」
俺が物音たてられて寝ていられる訳がない。
なんでだ、と首を傾げる。
再び無言が訪れて、気まずくなった時。
ピピピッ
「あ、」
「見せろ」
「見せて」
お、おおう...。
二人の大人が詰め寄ってきて、体温計を見る間もなく奪われる。
「七度三分ね...」
「お前、今日はバイト休みな」
「えっ!?」
「当たり前だ。衛生的に良くない」
あ...そっか。
「分かった...」
仕方がない。
「そうだね、佐々木くん。今日は安静にして、また明日元気な姿見せてね」
かがみ込んで視線まで合わされて、岬に言われる。
うわぁ。
目がマジだ。
絶対安静だ。
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