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第32話
『アンタのせいよ』
『アンタが生まれたせい』
『産まなきゃよかった』
『産まなかったらあの人は私のそばにいたの』
『今からでも...遅くはないわ』
「───────や、っ冬夜、起きろ!」
「っ、は、...はぁっ、はぁっ」
目を開けると、丈さんが顔をくしゃくしゃにして俺を見ていた。
「...っ、あー、寝てた」
一瞬、間が空いた。
「変な夢見たろ」
身体を起こすと、汗でびっしょりと濡れていた。
「.......見た気がする」
....,.覚えてない。
「あれ、店は」
時計を見ると、今はもう二時半。
いつもは店を開けている時間だ。
「あー、閉めた」
「はあっ?」
「いいんだよ、あれは俺の店だ」
「ぅわっ」
なんでと聞くまもなく、ベットに押し倒される。
「寝ろ」
「いや、でも、店」
店、俺が入るから開けよう。と言いかけると、
ギシ..
「...寝たくなるような事、...したいのか?」
「っ、じょ、丈さっ」
俺の上に乗られ、耳元で囁かれる。
い、色気っ....。
丈さんの吐息が耳にかかり、普段吸ってるタバコの匂いがふわりと香った。
「っわかった!寝る!」
「くくっ、いい子」
丈さんは、ニヤニヤ笑って離れていった。
タチ悪いヤツ。
「うっせぇ!おやすみ!」
...着替えて寝よう。
俺はさっさと眠りについた。
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