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第35話

「せんせーい!来ちゃった!」 「.......?」 大きなドアの開く音と声に目が覚めた。 「また岩瀬くんかあ.......部活はないの?」 シー、と言いながら小声で話す岬。 岩瀬......? 聞いたことの無い声だ。 俺はベッドからそっと出て、聞き耳をたてる。 「部活はしてないよ!なんで静かにしろなの?」 「隣で一人寝てるからだよ」 「ふーん......」 「分かったら出ていきなよ」 相変わらず結構言うな。 自分で自覚して言ってんのか?あれは。 「えーいやだ!僕、もっと岬先生のこと知りたいもん」 「知りたいって…なんでかな」 「好きだから?」 す、好き!?岩瀬ってやつが、岬のことを?! あんな奴が好きって.....どうかしてんじゃねぇのか? 「分かった分かった。もう、隣の奴起きちゃったから、今日のところは帰ってくれないかな」 えっ!?なっ、なんでバレたんだ!? 思わずビクン、と体を揺らした。 俺はなんも音立ててないのに! 「えー...ほんとなのー?」 ヤバいっ、こっち来るっ! と思った瞬間、カーテンを開けた長身の男と目が合った。 俺は布団に入ろうとして、カッチンコチンに固まった。 「わ、ほんとだ」 「んだよっ、閉めろ!」 ジャッ 反射的に男の鼻先でカーテンを閉めてしまう。 聞き耳をたてていたことが気まずいのもあった。 ベットにまた潜り込んで、何も見なかったフリをする。 「だから言ったでしょー、起きたって。......今日は帰ってくれないかな」 「......はいはい。また明日ね、岬先生」 ...行った...か? 岬のことが好きだなんて変わり者だ。 岩瀬って言ったか。 .......結局どんなやつだったか.....、顔をよく見とけば良かった。 「で、冬夜」 「ひっ」 近くで急に声が聞こえて、身体が強ばる。 「こっそり聞いているなんて、趣味悪いねえ」 そーっと布団の外を覗くと、腕組みをして微笑む岬が立っていた。

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