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第41話

岬side 「いいか、くまさ....クマに釣られた訳じゃないからな!」 渋々乗ってやるんだ、と可愛いことを呟きながら乗り込む冬夜に、頬が自然と緩む。 ...良かったぁ......くまさん増やしておいて。 眼鏡を取り出してかけると、車のエンジンをかけた。 前にも思ったけれど、助手席に誰かが乗っているのは物凄く不思議な感覚だ。 今まで乗せたことないもんなあ…。 ぼーっと考えながら運転していると、隣で冬夜がソワソワと身体を動かし始める。 「......?」 なんだ.....? 「おい、クマ......、はどこだよ」 ......ああ。 「後ろに置いてあるよ」 やっぱり、冬夜はこのくまさんが好きなようだなあ。 さりげなく後ろを向いてくまさんを確認する冬夜に、内心悶える。 「あのクマ落ちそうだから持っててやるよ」 赤信号で車が止まったところで、チラチラ俺を見てくる。 ......っあー、いじめたいなぁー.....。 でも、二度と乗ってくれなくなりそう。 冬夜に自覚は一切ないが、冬夜の見た目はまさに子猫のようで、夜に歩かせたくない。 「じゃあ...落ちちゃったら困るしお願いしようかな」 「えー?大丈夫そうだよ」と言いそうなのをぐっと堪えて、ふわふわのくまさんを一つ渡してあげた。 「ふん、」 わぁ...顔を埋めたよ、この子猫ちゃん...。 そっぽを向いてぬいぐるみをしっかりと抱える姿に、ムズムズした気持ちになった。 「よし、着いたよ」 「...」 アパート前に車を止めて、冬夜の方を見る。 「.....そのままバイト先行くから、......送れ」 窓の外を向いているから、冬夜がどんな顔をしていたのかは分からない。 ただ、少しだけ沈んだ声が気になる。 「......分かったよ。.....あ、そうだ。もう一つも落ちそうだから、持っててくれると助かるよ」 新しく仕入れたくまさんを後部座席の下にある袋から取り出すと、冬夜に押し付けた。 「.....ふんっ、仕方ねえな....店、ここ真っ直ぐ」 モゾモゾとくまさんを抱え直した冬夜を横目に、車を走らせた。

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