53 / 64
第53話
週明けの月曜日。
結局土曜と日曜は優介とお勉強会だった。
土曜日できなかったところは、日曜日にはしっかりと克服していたし、来月のテストに期待だ。
それにしても、眠い。
「今日も保健室だな...」
あくびをしながら保健室のドアを開けた。
「入るぞ」
「ああ、冬夜。寝に来たの?」
岬がパソコンから目を離し、俺の方を見た。
「眠い。ベッド使うぞ」
「うん」
俺はいつものベッドに潜り込む。
「....」
なんとなく耳をすませば、ぱちぱちとキーボードを叩く音がする。
なんか...変だ。
何がおかしいか分からないけど、おかしい。
俺はそれに気づけないまま、眠りについた。
『あんたのせいよ。全部!あの人が私を置いていったのも!』
『なんなの!?その汚いぬいぐるみは!捨てなさい!』
『嫌だっ、これは俺のだっ!』
薄暗い部屋の中で、俺は女に抗う。
『母さんっっ!』
投げ飛ばされて、ぬいぐるみを奪われる。
『嫌だっ!やだっ、取らないでっ!返してよっ...』
背中に焼けるような痛みが走る。
『っ返して!』
取り返そうと強く引っ張ったそれは、....驚くほど簡単に左右に裂けた。
『あっ、ぁあああああっっ!』
嫌だっ、嫌だ....っっ、なんでっ!
─────冬夜...大丈夫だよ
突如俺に触れた暖かい何かに、緊張が解れていく。
『っひ、...ううぅ、』
俺は涙を零しながら…それにしがみついた。
「っっ....」
「起きた...?」
「.....俺、...え、」
目が覚めると、岬が俺の脇に座っていた。
驚いて見開いた目から、暖かい何かが零れ落ちる。
頬に触れて、涙だと気づいた。
「...んでここに」
「魘されてたから様子を見に来たら、冬夜が俺の腕を掴んで離さなくて」
「っ、わっ...」
うわっ、ほんとだ..。
がっちりと両腕でロックしていた岬の腕を、そっと離す。
「.......なんか...悪い」
「........なんの夢を見てたの?」
.......思い出したくない。
「分からない。...覚えてない」
「お母さん、って言ってた」
「.......」
痛いほどの沈黙が、保健室に広がる。
ともだちにシェアしよう!