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第53話

週明けの月曜日。 結局土曜と日曜は優介とお勉強会だった。 土曜日できなかったところは、日曜日にはしっかりと克服していたし、来月のテストに期待だ。 それにしても、眠い。 「今日も保健室だな...」 あくびをしながら保健室のドアを開けた。 「入るぞ」 「ああ、冬夜。寝に来たの?」 岬がパソコンから目を離し、俺の方を見た。 「眠い。ベッド使うぞ」 「うん」 俺はいつものベッドに潜り込む。 「....」 なんとなく耳をすませば、ぱちぱちとキーボードを叩く音がする。 なんか...変だ。 何がおかしいか分からないけど、おかしい。 俺はそれに気づけないまま、眠りについた。 『あんたのせいよ。全部!あの人が私を置いていったのも!』 『なんなの!?その汚いぬいぐるみは!捨てなさい!』 『嫌だっ、これは俺のだっ!』 薄暗い部屋の中で、俺は女に抗う。 『母さんっっ!』 投げ飛ばされて、ぬいぐるみを奪われる。 『嫌だっ!やだっ、取らないでっ!返してよっ...』 背中に焼けるような痛みが走る。 『っ返して!』 取り返そうと強く引っ張ったそれは、....驚くほど簡単に左右に裂けた。 『あっ、ぁあああああっっ!』 嫌だっ、嫌だ....っっ、なんでっ! ​─────冬夜...大丈夫だよ 突如俺に触れた暖かい何かに、緊張が解れていく。 『っひ、...ううぅ、』 俺は涙を零しながら…それにしがみついた。 「っっ....」 「起きた...?」 「.....俺、...え、」 目が覚めると、岬が俺の脇に座っていた。 驚いて見開いた目から、暖かい何かが零れ落ちる。 頬に触れて、涙だと気づいた。 「...んでここに」 「魘されてたから様子を見に来たら、冬夜が俺の腕を掴んで離さなくて」 「っ、わっ...」 うわっ、ほんとだ..。 がっちりと両腕でロックしていた岬の腕を、そっと離す。 「.......なんか...悪い」 「........なんの夢を見てたの?」 .......思い出したくない。 「分からない。...覚えてない」 「お母さん、って言ってた」 「.......」 痛いほどの沈黙が、保健室に広がる。

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