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第58話

岬side 隣で俯く冬夜を見つめる。 ....あの男に言われた覚悟。 あの男に一瞬で見破られたのは、俺の浅はかな考えだった。 一目惚れして、好きになって。 .....冬夜を、俺は快楽で陥れて手にしようとしていた。 ......強引もいいところだよね、本当に。 その結果、冬夜を混乱させてる。 多分、顔色が悪くちゃんと寝てないのも、俺のせいだな。 でも。 冬夜は冗談と言ったけど.....そのつもりは全くない。 ......ちゃんと付き合いたいって思ってる。 一度強引に押し切った告白をちゃんとすべきだし、冬夜のペースでいいから好きになってもらいたい。 「......冬夜」 俺はダメだなあ…。 「誤解なんかじゃないよ......俺は、本気で冬夜のことが好きなんだ」 見開いた目が、こちらに向いた。 「冬夜に......一目惚れして、俺は焦って手に入れようとしちゃったんだ」 「一目惚れ.....」 「うん、好きだよ。.....だから、誤解じゃない」 「...」 冬夜の顔が赤くなって、また俯いた。 「ね、冬夜.....やり直させてほしい」 「やり直し.....?」 「冬夜は俺の事、嫌いになったと思うけど…..俺は好きなんだ」 .....やり直し。 さんざん冬夜に色々な事をしといて、やり直し。 自分の情けなさに、口元が歪んだ。 どうしてこう上手くいかないんだろう。 冬夜は俯いたまま、動く様子がない。 「...ごめんね、......」 「お、俺は」 ギュウ、と冬夜は膝の上で拳を固く握り、言葉を零した。 「俺は、お前のこと、嫌いじゃない」

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