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第7話

 *** 「ん……うぅ」  時間をかけ、佑の口腔を舌で犯し続けると、腰が砕けてしまったようで細い体が崩れ落ちた。倒れぬように腰を支え、一度唇を解放する。抱き上げベッドへ横たえれば、初めてのキスに狼狽えたらしく、呆然とした表情をした佑は細かく震えていた。 「そうか、ここへは初めてだったな」  吸いすぎたせいで赤く色づいた唇を、指の腹でそっとなぞると、ビクリと体を硬直させるが抵抗することはない。きっと、深いキスに酔いながらも、賢い彼は気づいているのだろう。匠海の心の中にある苛立ちにも似た感情に。 「お前のせいじゃない」  ペニスを覆う拘束具へと指を伸ばし、それを器用に外しながら耳元へ低く囁くと、ほんの少しだけ彼の体から強ばりが解け、視線の行き場に困っているのか長い睫毛が臥せられた。  この部屋は、佑のために匠海が用意した犬小屋だ。飼い始めた当初は自邸の離れに住まわせていたのだが、匠海が長期で家を空けた際、佑が望まぬ暴行を受けたことがあり、以降都内にマンションを買い、最上階のワンフロアを彼のための小屋とした。ただ、匠海もここへ住んでいるから、実際には、室内飼いの犬と同じような生活だ。 「脚を開けるか?」  尋ねると、頷いた彼はゆっくりと脚を開いていく。三年経っても慣れないらしく、耳まで真っ赤に染める姿が愛おしくてたまらなかった。 「……っ」  拘束具を外してやれば、悶えるように腰を浮かせ、拙く腰を上下させている姿がなんとも可愛らしい。 「待て」  だが、達することは許していないから、勃ちあがっている小さなペニスの根本を掴んで命じると、佑は眉間に皺を寄せ、「わん」と控えめな声で吠えた。 「いい子だ」  どんなに理不尽な命令も、彼は健気に聞こうとする。最初はこんな風になるなんて思ってもいなかった。自分が飽きるか彼が逃げるかまでの関係と思っていた。なにせ、匠海が佑を手に入れたいと強く思った背景は、それまで飼っていた犬が、寿命で死んだからに他ならず、あの時たまたま入った花屋で見かけた佑の瞳や仕草が、犬のそれと重なったからだ。  ――我ながら、身勝手な話だ。 「くぅ……ん」 「ようやく理解した。どうやら、俺は颯真に嫉妬したらしい」  根本を掴んだままのペニスを反対の手で包み込み、絞るように扱き始めれば、驚いたように目を見開いた佑の体が奇妙に跳ねた。こんなことを、佑にするのは初めてだ。

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