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二、

夜鷹は一日に何人もの相手をする。だからこそ、仕事をするにあたり手軽に満腹感を得られる、しかも安価な蕎麦を食べるのだ。そうして体力仕事に励んだ。 「お兄さん、一杯ちょうだいな」 「あいよ」 来客が少ないとはいえ、しまきの屋台にも夜鷹は訪れる。この女もまた、古着の派手な小袖をまとい、手拭いを吹き流しに被った夜鷹だろう。 茹で上がった蕎麦をどんぶりに放り込み、つゆを注ぐ。撫でかけるように注がれたつゆから、ふわりとだしの香りと湯気が漂う。 「……ねえ、その髪、粋だねえ」 流された総髪を見た女は、紅を引かない唇で、しまきに向かって色を吐く。けれど、彼はなにも言わずにどんぶりを差し出した。 「ふん。いい男なのに。つまんないの」  ◆ ◆ ◆ そろそろ空も白む頃だろうか。宵に浮かぶ星のきらめきも、徐々に弱弱しくなり始めている。それでも夜鷹たちはいまだ草むらに、川辺りに、或いは路地裏で。客を悦ばせるために、その性を羽ばたかせて飛ぶ。 ざらめもまた、休まずに働いていた。今夜はすでに三人ほどに体を開き、そろそろ疲労もでている。もう少し明るくなったら今日のところは帰ろう――そう思っているときに限って、客というものは訪れるのだ。 「二人だが、いいよな?」 人目につきにくい塀の陰を選び、ざらめはむしろを敷いた。敷いたむしろに膝立ちになると、二人の客たちと対峙する。 「はじめてくれ」 「はい。……では、失礼します」 両の手を伸ばして、男たちの股ぐらを探る。男らもそれを手伝うように、けれど愉しむように下帯を緩めた。視線の先に熱り立つものが現れ、ざらめはそれを躊躇せず咥える。先程まで働いていたのであろう男のそれは汗くさく、つんと鼻をついた。そうしてもう一人の陽根には指を這わせ、やがて柔らかく握り込む。 「あぁ……すげ、うめぇじゃねえか」 「はあ、手も意外といいな」 陰間茶屋にいた頃よりも、どうもこちらはうまくなってしまったようだ。 ざらめもわざわざ男だと明かして声はかけない。そのため、直前に気付いて挿入をやめる客もいた。そういった客を悦ばせるために、手淫と口淫もずいぶんとしてきたものだ。 「あっ、くぅ……」 男が一人、情けなく呻く。程なくしてざらめの唇の端から、ぽたぽたと白濁液が垂れた。 「やべぇな、もたねえ」 「そんなにか? こっちも口でしてくれよ」 袷から懐紙を取り出すと、その上に男の子種を吐き出す。それでも少しは飲んでしまったようで、喉奥から青臭さがせり上がった。 もう一人の茎根もくわえて、射精を促す。そうしているうちに、先に達した男が屈んで腰に触れた。 「っん……」 「なあおい、尻は寂しくねえか?」 「……はぁ、ん、疼きます」 糸を引きながら陽物から唇を離す。本心ではない。けれど否定したところで、なにもよいことはない。淫乱を演じるのが、この仕事ではなによりも得なのだ。 「こちらもいただけたら、んぐっ……」 返答の途中に、男のものが口へ詰め込まれ、苦悶の声を漏らす。 「おいおい勝手に離すなよ」 「んん……ん、ふっ……」 鼻から息が抜ける。きっと男たちにはこれが、甘い吐息のように聞こえていることだろう。 「どんな風によがるのか見てみてぇな」 男はそう言いながら臀部を撫でまわす。 空は一層、乳白色の絵具を垂らしたように白み始めた。 つづく

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