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第3話
空を見上げるといよいよ雪が降ってきた。予報通りのホワイトクリスマス。
そして積雪の予報も言っていた。
(ホワイトクリスマスが何だっていうんだ)
少しやさぐれながら、自分の部屋へ向かおうとした時。
灯りがついていることに気づいた。部屋の鍵を持っているのは逢阪と浅倉だけだ。
(もしかして…)
慌てて部屋に走って向かい、玄関を開けた。
「遅かったな」
部屋の中にはスーツ姿の浅倉がいた。浅倉が居たことにギョッとしたがさらに驚いたのは…
テーブルの上にある、チキンとサラダ。チーズに、クーラーワインに冷やしてあるシャンパン。当然逢阪が準備していたわけではない。
「…これ、買ってきてくれたの」
「クリスマスだからな、お前、どうせ準備できないだろうと思って」
冷蔵庫にはケーキもあるぞ、と浅倉が言ったので、冷蔵庫を開いて見ると小さなホールケーキが鎮座している。
「あ、浅倉ってこういうの嫌いなんだと思ってた…あと男同士だし…」
「俺はお前がこういうイベントが好きそうだからと思って」
それに、と浅倉が苦笑しながら付け足す。
「男同士で何でクリスマス祝いしちゃダメなんだよ」
そりゃそうだけど…、と言い返そうとした逢坂に浅倉が紙袋を渡す。
「ほら」
「…何?」
「クリスマスプレゼント」
目をパチパチさせながら驚く逢阪。浅倉は今更ながら恥ずかしくなってきたのか耳まで赤くなっている。包装を解いて、出てきたのはハンドクリームだ。女性向けのショップのもので、早速つけてみるとフローラルな香りがした。
「お前、冬場、手が荒れるだろ」
浅倉が真っ赤になりながらそういう。女性向けのショップの中で、浅倉は逢阪のことを思い、選んでくれたのだろう。
どんなに職場で頭が切れる店長でも。若くして支店長になるスーパーマンでも。
逢阪の前では浅倉はただの可愛い恋人なのだ。逢阪が浅倉の体を抱きしめると、ますます赤くなっていく。
「ありがとう…遼」
「…名前で、呼ぶなよ」
すっかりゆでダコになった恋人に、逢阪はキスをした。
「あ、俺もこれ!」
ポケットから取り出した小さな袋を渡す。浅倉は中身を取り出しジッポーを取り出した。
「支店長になるんだからさ、絶対こっちの方が似合うって」
そう言って笑う逢阪。
「お前、忙しかっただろうに用意してくれてたんだな」
つられて浅倉も笑って、逢阪にキスをする。
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