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第10話

陸奥は無言のまま、覚悟を決めたように肘を落として額を敷布につけた。 「一度この味を覚えたら、夜毎(よごと)身体がこれを欲しがって啼くようになるぞ」 ブルブルと、陸奥が敷布につけた頭を振る。拒絶か、否定か。判然としないが、白状する気はないらしい。 「仕方がないな…… 」 内心の興奮を押し隠して深い息を吐くと、俺はゆっくりと腰を進めた。 菊の花芯をこじ開けながら、剛直が食い込んでいく。その官能的な眺めと温かい圧迫感は()も言われぬ快感で、誘い込むような肉壷のうねりに我を忘れそうになる。 まずは先端だけと算段していたにもかかわらず、気がついたら根元までを埋めてしまっていた。 「ぅ…… く…… っ」 奥まで貫かれた陸奥は小さく呻き、細い身体が小刻みに震えている。罪悪を感じて半ばまでをそっと引き戻すと、中の肉が惜しむように絡みついてきた。 快楽に飲まれそうな俺の意識を、違和感が繋ぎとめる。それは指を挿れた時に覚えたのと同じ、陸奥の身体に感じられるーー「慣れ」だった。 「陸奥、お前…… 初めてじゃないだろう」 声を上げずに短い息を漏らす陸奥に訊いた。 初めて貫通された男なら、いくら指で慣らしても、ここまで滑らかには入らない。 浅いところでゆるく抽挿しながら、俺は陸奥の前に手を回した。痛みに萎縮するどころか、それは再び硬く勃ち上がり、先端には新しい雫が滲み始めている。 割れ目に溜まった体液を塗りつけるように亀頭を揉むと、俺のを包む肉壁がギチギチと締めつけてきた。 喘ぎも、嬌声も上がらない。それでも、彼の華奢な身体は間違いなく「快楽に」濡れて震えている。 「人は見かけによらぬと言うが…… こんな好き者とは、な…… っ」 狭い孔道を奥まで突き上げると、陸奥の背中が痙攣し反り返った。亀頭のくびれまで引き抜き、再び全体を埋める。深い抜き挿しに翻弄された腰の曲線が、猫のようにたわむ。繰り返すほどに、波打つような肉壁は熱を帯び絡みついてくる。 身体は確かに反応している。ひくつく肉壺は、まるで男を喜ばせるために作られたもののようだ。陸奥自身もしとどに濡れ、熱く滾っている。それでも、声を上げず顔が見えない陸奥に、俺は次第に不安になった。 「脚がつらいか…… ?」 一度抜いて、細い腰を支えながら陸奥の身体を表に返した。声を抑えていたせいか彼の顔は紅潮し、目には涙が溜まっている。これ以上どうするつもりだと俺を見つめるその目が、脚を割り開かせると大きく開いた。 「…… っ!?」 温かい孔の中に、屹立を再び埋める。痛いほどに締め付けてきた陸奥は、両腕で顔を隠した。

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