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第11話

男娼なのかもしれない…… 俺の中の冷静な部分が、そう囁いた。 春を売る者たちは、客と向き合って身体を開くことがない。美しく結った髪や帯が乱れるからというのが表向きの理由だが、その実は客に表情を見せないためだという。 淫らな喘ぎを漏らすその顔が白けているのを、客は知らない。知らなくていい。 仰向けで身体を開かされ瞠目した陸奥は、今までに何人の客をとってきたのだろう。 桃色に染まったきめ細かい肌に幾人の男の指が這い、熱い肉のわななきにどれだけの男が溺れのだろう。 胸が焦げるような思いで、俺は顔の見えない細い身体を突き動かした。 「んっ、んぅ…… っ」 突いても揺らしても、手の下に隠された唇から苦しげに小さな呻きが漏れるだけだ。形のよい性器は大きく腫れ、揺するたびに透明な汁を飛ばしているのに。 陸奥の口の前にある左腕を掴み、そっと外してみる。口に押し付けられていた手の甲に、深い歯型がついていた。 「声を出さないように、躾けられたのか…… ?」 そう聞いても、陸奥は右腕で目を隠したまま顔を逸らした。そのまま奥を突くように揺すると、歯をくいしばって声を抑えている。俺は彼の右手首をとり、(はりつけ)にするように両手を敷布に押し付けた。 陸奥の赤く潤んだ目に睨まれて、嗜虐心を刺激する興奮が背筋を駆ける。 「そんな顔をしても、無駄だ。()いんだろう?」 顔を隠すもののない陸奥が、感じる身体を恥じるように固く目を閉じて首を振る。 「自分で触ってみるか?こんなにして…… 」 「やぁ…… っ!」 天井に向かってそそり勃つものを握ると、痙攣した身体に押し出されたような高い声が漏れた。 陸奥は失態に瞳と唇を震わせて、目を閉じた顔を横に逸らした。 「無理に抑えなくていい。何も心配いらない、誰も聞いていない。雪が…… 全ての音を消してくれる」 腕を離して、柔らかい頬をなでる。陸奥は泣きだす直前の子どものように顔を歪め、一層強く唇を引き結んだ。 透明な蜜に濡れた彼の屹立を手筒でしごきながら、浅く、深く、ひくつく中の粘膜をゆっくりと擦り上げる。 陸奥は必死で感じるまいとしているかのように、全身の筋肉を硬直させて震えていた。 (なぜ、そんなにまで…… ) 男娼ならば、感じてよく声を上げる方が客に好まれるはずだ。この美貌と妖艶な身体で素直に喘げば、男色を嗜む華族の間で取り合いになるほどの人気が出ただろう。 嗜虐心を煽るために演技しているようには見えない。 陸奥はまるで、まぐわいで快感を得るのが罪悪だと感じているかのように頑なだった。

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