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第13話

「陸奥というのは、源氏名か?お前…… 男娼なのか…… ?」 されるがままに腹を拭かれていた陸奥にそう尋ねると、彼は弾かれたように目を剥いた。 「違います!」 その鋭い反応にいささか驚く。 途中から、男娼ではないだろうと思ってはいた。 「あのはり師は患者に淫行する」 例えばそんな既成事実を作って俺の評判を貶めるために送り込まれたにしては、彼には愛想が無さすぎた。 陸奥には何とも言えぬ色気があるが、それは客に媚びを売るような作り込まれた妖艶さではなく、内側から匂い立つ、秘匿の花のようなものだ。 おそらく本人には自覚すらないだろう。 男娼と疑われ自尊心を傷つけられたらしい陸奥の反駁に、そのような下賎な身分ではないという矜持が垣間見えた。 俺の下から体を抜き、浴衣に手を伸ばした陸奥の身体を後ろから抱きしめる。汗をかいた首筋に舌を這わせると、きめ細かい肌が鳥肌立った。 「何を…… ?」 「もう終わったと思ったのか?甘いな」 「あ…… っ!」 油の残る肉壺に、指を挿し入れる。細い身体がビクリと震えた。 「男娼ではないなら、この男に慣れた身体は何だ?誰に可愛がられている?そいつは何の目的で、お前をここに送り込んだ?」 グチュグチュと淫靡な水音を立てながら、俺の指が陸奥の中をかき混ぜる。彼は次第に前のめりになり、震える唇を引き結んで蹂躙に耐えた。 「あくまで(だんま)りか…… ?分かっているだろうが、他に逃げ道はないんだ。外には逃げられず、誰も助けには来ない。お前が泣いて全てを話しますと言うまで、俺は何度でもこの身体を抱く。気絶してもやめてやらんぞ…… ?」 そう脅しても身体を硬くしてグッと顎を引いた陸奥に、落ち着きかけた身体の熱が再燃する。 思い出させるように、彼の体内にいる指先で密やかなしこりを掻いてやると、汗ばんだ身体が俺の腕の中で痙攣した。 「覚悟はできてるな…… ?」 正直言って俺は、この時にはもう陸奥が誰であろうと殆どどうでもよかった。むしろ朝までずっと黙っていてくれとさえ思っていた。 こんなことをされてまでも、陸奥が頑なに庇う彼の(あるじ)に暗い嫉妬を覚えた。おそらくはその人物が、彼を拓き、感じる身体にさせたのだろう。 その男の前でなら、陸奥はあられもなく悦び喘ぐのだろうか。 涙を浮かべて敏感な身体の反応に抗うのではなく、その手で男を愛撫し、彼の精を受け入れるのだろうか。 笑顔を、見せたりするのだろうか。 嫉妬は劣情に変わり、久しく人肌に触れていなかった俺の身体は、噂に聞く発情した虎のように猛り狂った。 一晩のうちに、何度精をまき散らしたかわからない。 陸奥の顔は、人形のように動かなかったのが嘘のように涙と涎で汚れた。一文字に閉じてほとんど開かなかった口からは艶を帯びた喘ぎと嬌声が絶え間なく漏れ、その合間にもう勘弁してくれと泣いた。 俺はもう、彼の目的を訪ねたりしなかった。 ただ何かに取り憑かれたかのように、どちらのものかもわからない体液で汚れた布団の上で、白く美しい身体を求め続けた。

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