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第3話
食事を終えた頃あいつはもううつらうつらしていて今にも眠ってしまいそうだ。
最近疲れやすいのか家にいるときは割りと寝てることが多い。
俺にはわからないがあいつなりの付き合いやらで疲弊しているのかもしれない。
「おい。寝るなら部屋で寝ろ」
「んー…ねぇ。」
「ん?」
「今日一緒に寝て?」
「お前の部屋で?」
「ん」
一緒に寝ようと誘われるのは一度や二度じゃない。大学に入ってからあいつは夢見が悪いみたいだ。
「別に良いけど。」
了承の言葉に安堵したように笑顔を向けてくれるそのいつもとは違うあどけない表情に俺の胸は鳴る。あぁ…やはり…俺は…
「明日さぁ。ちゃんとデート付き合ってよね」
「その腫れが引いたらな。」
「うん!」
そして翌日。何とか腫れも引いて幸い風邪も引かなかった。
約束通り出掛けることにしたのだが…
「車?」
「うん。少し遠出したくて」
駅前の店で車を借りて乗り込んだ。
「運転きつくなったら変わるからな」
「ありがと」
ハンドルを握る横顔。初めて見るその姿に胸が高鳴って仕方がない。
カッコいい…双子なのにどうしてこうも違うのか…
「ん?どした?」
俺の視線に気付いていたのか信号が赤になると不思議そうに首をかしげてこちらをみた
「初めて見る姿だから見惚れてた」
変に誤魔化してもこいつにはきっとばれてしまうので素直にそういうと頬を染めた
「えぇ!それ嬉しい!もっと見惚れててよぉ」
「みんながお前に惚れるのわかる」
「好きな人に惚れてもらわなきゃ意味ないけどね」
「好きな人いるの?俺も知ってる人?」
意味深な笑顔を浮かべながら小首をかしげる仕草も妙に艶があって体内の熱が迫り上がる気がした
「…秘密」
「そうかよ」
「そういうお前は?いるの?好きな人。」
「いるよ」
「へぇ。どんな人?」
「俺のヒーローみたいな人」
「ヒーロー?」
「あぁ。でもまぁ上手くいかないけどね。ほら。俺人と話すの無理でしょ?」
「そう?お前は誰よりわかりやすいけどね」
「それはお前と俺が双子だからだろ。昔からそう言うのあっただろ?」
「まぁね。ずっと一緒だもんな。
「そろそろ運転変わろうか?目的地まであと半分ぐらいみたいだし」
ナビの表示する到着地までの距離をみて伝えた。
「そうだね。お願いしてもいい?…」
「うん。そこのコンビニ停めて」
「はぁい」
運転を変わると直ぐに眠り始めた。体は大丈夫なのだろうか?
新しい環境にまだ慣れていないだけならいいけど…
昔からきつくても誰にも伝えず一人で耐えてきた俺の片割れ。俺が体が弱いばかりに我慢することを覚えてしまったこいつ…
信号で停まる度柔らかい髪を撫でた
「大丈夫か?…」
「ふふ…大丈夫…心配しないで…疲れてるだけ…だよ…」
「起きてんのかよ…」
「んん…もっと…撫でて…」
「運転中は余裕ねぇよ。あとでな」
「ん…」
微笑んだように眠る姿にドキリとした。これはいつものじゃない。何か胸騒ぎがしたのだ…
「…本当に…大丈夫かな…」
不安を覚えながらハンドルを握った
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