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第2話
「はぁ、そろそろ終わらせねぇと。」
あとは、荒川が本当に10万もの抑制剤を盗んでいたかどうかをハッキリさせるだけだ。
早く口を割ってくれればすぐ終わるのに…、と取り調べ室の扉を開けると、中から信じられないほどのフェロモンが溢れ出てきた。
「うっ………、何だこれ…」
番のいるΩは無闇矢鱈 にフェロモンを撒き散らさないはずだ。
だとするとさっきの話は全部出鱈目 だったって事か?
部屋を覗き込むと、荒川は真っ赤な顔で、ハァハァと荒い呼吸をしながら涙を流していた。
「ぁっ…あきらぁ……、な…で……、ふぅ…」
「おい!どうした荒川?!」
「あきら…あき………ら…………!!」
荒川は窓に手を伸ばしながら必死に男の名前を呼んだ。
きっと荒川を置いて消えた男のことなのだろう。
しかしどうしてこんなにフェロモンが…。
「貝塚さん!殺人事件です!!」
「わかった、今行く。荒川、今誰か呼んでくるからそれまで我慢してろよ」
俺は荒川を部屋に残して、部下の後について現場へ向かった。
─────
現場に着くと、そこに待機していた部下が俺に事件の内容を細かに説明してきた。
「被害者は桜田 明 、26歳、男性α。ここら一体を取り締まっている貝塚組の下っ端です。どうやら風俗で撒くように金を使ってるらしく、今回組の金に手を出して心臓一発。即死らしいですよ」
「αなのにとんだ阿呆もいるわけだ」
「本当そうですよね。それより私が驚きなのはヤクザが貝塚組ってことですよ!貝塚さん、関係者だなんていいませんよね〜?」
「馬鹿言うな。そんなわけないだろうが。それより………」
26歳で男で、α性で名前が『あきら』。
もしかして荒川の昔の男ってのはコレか?
つまり、さっき荒川がフェロモンを強く発したのは番が死んだからって事なのか?
「悪い。もう調べも付いているし、俺は少し調べたいことがあるから署に戻る。後は頼んだ」
「あ、はい。お疲れ様です」
俺は地面を蹴って、荒川のいる取り調べ室へ急いだ。
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