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アレキサンドライト・ロング・デイ──1
冬の肌寒い某日の早朝、それは起きた。小説家、三咲花汰 ──本名、日向平介 の自宅で住み込みの家政夫兼恋人をやっている橘司郎 は目覚める。時計の針は五時半を差していたが、彼は枕元の何かを探るよう手を動かしていた。いつもある眼鏡にないと気づいた時、薄らと目を開ける。
「……あ?」
寝起きだろうと悪い視力は世界をぼんやりとさせる。しかし眼鏡がなくとも見える視界にまだ夢かと思わせたが、意識がはっきりした彼はうつ伏せの格好から飛び起きた。
見慣れない部屋だったからである。
眼鏡の変わりにあったスマホを手に取り、何も起動させていない真っ黒な画面に映った自分を見て顔を触り、彼は静かに呟いた。
「…………何の薄い本ですか……」
そうこれは、奇怪な二十四時間の始まりだった。
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