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アレキサンドライト・ロング・デイ【グリーンサイド】──7

 目が覚めたのは十二時を回った頃だった。  凄い……こんな時間まで寝たの久しぶりだ……でもまだ眠い……凄い……。  ふあ、と大きなあくびで少し目が覚めた。枕元に置いていた眼鏡をかけて、スマホをチェックする。途中、何度かライーンの通知音は聞こえたものの、指一つ動かないユーキさんの身体は凄かった。そんなわけで少し回復したユーキさんの身体の俺は、至福のベッドの中でそのライーンを読む。 『朝食洗濯掃除完了』 『窓拭き草共の水やり完了』 『布団掃除機完了』  おお……マメな報告は仕事柄かな。  しかし様子がおかしくなってきた。 『まだ寝てんのか?』  いやいや、しっかり寝ろとの仰せだったじゃないですか……。 『クリーニング店ってどこだよ』 『どこだっつってんだよ、起きろ』 『わかった、寝ろ』  寝てましたねぇ……。 『昼飯はホットサンド』  これは画像も送られてきて、美味しそうにチーズがとろけていた。昼ご飯はハナさんが片手間に食べれるもの、というのをライーンしていた。締め切り前は集中を切らせないようにという配慮からだが、これが功を奏しているようで何よりだ。仕事場でも食べれるし、野菜もきちんと入っているし良いメニューだ。  ぐぅ。  画像を見ていたらお腹が鳴ってしまった。喉も乾いた事だし、と起き上がる。 「煙草の匂い……」  特別嫌とは感じないが、いつもと違う匂いは初めての場所なんだなというのを実感させる。カーテンを開けた時、昼の晴天に目が焼かれた。窓を開けて冷えた空気を入れる。  うあー……寒いけどせっかくだし。  俺は掛け布団だけでも、とベランダに干し始めた。朝方起きた時はよく見れてなかったが、なかなか整理整頓されている部屋だ。片付けという片付けも必要なさそうだし、食べかけの弁当は処分するとして何を食べようか。  スエット姿のまま、廊下と続きになっているキッチン横の冷蔵庫の前にしゃがむ。 「うーん……」  しなびかけの野菜にブロックベーコンが五分の一くらい、ピザ用のチーズと調味料と缶ビールがずらりと並んでいる。冷凍庫にはご飯とレンチン用の炒飯やうどんなど。  一度冷蔵庫を閉じた俺は考えながら洗面所に向かう。部屋は割と広く見え、色んなところが近いと感じた。 「──うわっ」  鏡に映った顔色の悪さにぎょっとした。寝起きだというのに真っ白で、朝方よりは目は開くしましになったと思うのだがこれは酷い。  ユーキさんって忙しい人なんだなぁ……いつも飄々としてるから気にしなかったけど、ちょっと優しくしよ……。  ばしゃばしゃと顔を洗って新しいタオルで顔を拭く。眼鏡を外すと何も見えないのも新鮮だった。俺は視力が良い方なのでこういうのも貴重な体験か、と歯ブラシを取る。  ん、このペパーミントいいなぁ。今度買お。  鏡の前でしゃかしゃかあわあわと歯磨きするユーキさんの顔を眺めてみる。鋭い目つきは俺にないもので、ところどころちくりと伸びたヒゲはあまり生えない体質のようだ。  ヘースケさんと同じ二十七歳のこの人は、ヘースケさんを好きだった、人、で。  ……考えるのやめよ。とにかく二十四時間──あと十五時間くらいだし。長っ。

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