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アレキサンドライト・ロング・デイ【グリーンサイド】──8
野菜とベーコンを全て細かくみじん切り、バターはなかったから少量のマーガリンで焼いて、冷凍ご飯を入れて軽く炒めてからコンソメスープを投入。スープ多めにぐつぐつ温めたらチーズを適量入れて弱火で軽く混ぜ合わせる。チーズが良い感じにとろけたら、出来上がり。
「簡単スープ風、リゾット的、なも、の──と」
俺もライーンでユーキさんに報告すると、ものの数秒で返事が来た。
『美味そ』
うん、上手く美味く出来た。手を合わせて素早く一口。熱くて軽く口を開けて湯気を逃がす。我慢出来なくて水を飲んだ。何となくテレビをつけて、再放送のバラエティ番組を流す。
こういう休日は本当に久しぶりだ。いや、初めてかもしれない。ヘースケさんと出会う前に住んでいたアパートはここよりも狭く、テレビがなかった。洗濯機もなかったからコインランドリーだった。蓄えもそんなになかった頃だから毎日お腹が減っていたような気がする。あの時なんとかなっていたのは、優しい人達が周りにいたからだ。
いつもおまけしてくれてた弁当屋さんのおばちゃん、元気かな……。
こういうきちんとした家があってご飯が食べれるしっかりした大人に俺はまだ成れていない。
「いいなぁ……」
呟いて、はっとする。願っても妬んでも仕方がないなんてわかっている。だから俺は甘えてでも進む事にした。ヘースケさんのところだけじゃなくて、バイトも始めた。まだ慣れてはいないが──充実してる、なんて思うのはおこがましいだろうか。
早々に食べ終えた俺はソファーに足を投げ出し仰向けに寝そべる。電気が眩しくて目を閉じた。考え出すと止まらない。
俺は何になりたいんだろう……。
「…………うあー」
なんとなく吠えてみた。いつかユーキさんが言ってくれた言葉を思い返す。甘えていいんじゃね、ってやつ。あれには救われた。俺とは違うユーキさんの腕を上げ、その手を見る。
この大人の手は俺と同じ十九歳の頃、どうだったんだろう。同じ年のヘースケさんも、おじさんのトールさんも、十九歳だった先輩達は。
足に反動をつけて起き上がり、ばしっ、と頬を挟むようにビンタする。それと同時に通知音が鳴って、慌ててスマホを見るとそこには、やばい、とされる事が書かれていた。
『うら若き女子高生が返事がどうのって言ってる。誰?』
「う、うわああああああ……っ」
俺は冷や汗全開でスマホを床に落とした。
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