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アレキサンドライト・ロング・デイ【グリーンサイド】──11

『──おいこらシロちゃんライーン既読無視ってどういう事だこのノッポ野郎』  うわああ……。 『聞いてんのか?』 「きっ、聞いてますっ」  俺はソファーの上で正座し、スピーカーにしたスマホをテーブルの上に置いた。話というのはわかっている。最近たまに話していた近所の女子高生の事で、告白は驚いたけど何も言えなかったのも事実で。  するとスピーカーからため息が聞こえた。 『お前は今度あの子に会ったらあったかい飲みもんを貰う』 「……はい?」 『そういう関係になったって事だ。今まで通り挨拶とちょっとの話でいい』  どういう? と首を傾げるもユーキさんに言わなければならない事がある。 「あ、あの、ヘースケさんには言わないでください」 『なんで?』 「こういうのって何か、知られたら──」 『──あー違う違う。俺がなんでわざわざ言う必要があるんだって話。お前が知ってりゃいいだろうが』  こういうのはお前と彼女だけで部外者はいらない、とユーキさんは言う。俺は周りの事を気にしてしまっていた。ヘースケさんがどう思うかなとか、どう答えたらあの子が傷つかないかなとか、俺の気持ちは決まっているくせに、そういうところが重要な気がしていた。だから言えなくて先延ばしにしていた。 『……ま、俺には知られちゃったけどな』  そうでした! と、慌ててスマホを掴む。 「す、すみませんっ、ほんと言わないでくださいねっ」 『言わねーって。お前の中の俺はどんな奴なんだよ』  からかいが上手な人できっと脅しとかも上手いのかなって、と正直に言うと笑われた。そして気になった。 「あの……何て言ったんですか?」 『あー…………またな、っつった』 「嘘だ! 今の色々含みましたよね!?」 『うっせー! じゃあな、寝ろ』  あ、という間に通話を切られてしまい、脱力した俺はまたソファーに横に倒れた。  もう……もーっ! ユーキさんってそういうとこある!なんだよ! なんか、もー、なんだかんだ言って上手くやってくれたんでしょ! ツンデレ! 眼鏡! 全身疲労!  はぁ、と息をついてまた、むくり、と起き上がる。  洗濯でもしよ……その方が心が落ち着く気がする……冷蔵庫の中のやつもやばいの多かったからおかず作りまくってタッパーにストックしておこ……なんか、嫌がるくらいに部屋綺麗にしてやろ……。  そのくらいしか反撃出来ない自分の小ささとこの身体の自由のきかなさにため息がもう一つ出る。するとまたライーンの通知音が鳴って、俺は飛び上がるようにしてまた正座の体勢に戻った。ユーキさんかな、と思ったら──。 『帰りに冷えペタ買ってきてー、ないー』  ──ハナさんからだった。まずい、ユーキさんは知らない。慌ててスマホをタップ──ええい、通話が楽だっ。  数回の呼び出し音。 『なんだよ』 「すみません、ハナさんからライーン着まして。ドラッグストアに寄ってください、コンビニでもいいですっ」 『あ? もう玄関前なんだけど』 「戻って冷えペタ買ってくださいっ」 『……ぜーったい! 俺の方が大変なミッションだ!!』  それはお互い様です、と言い返そうとしたがすでに通話は切られていた。  こっちだって気が気じゃなくて大変です! 今のとこ何もないだけです! ……何もない、よ、な? あ、ハナさんに返信しないとっ。

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