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第24話

「……樹さん、これ……汚れちゃうから脱がないと……」  前に付いているボタンは全て外され、白い胸には樹が付けた赤い痕が幾つも散らばっていた。結局上半身裸になりその上にサンタ服を着て、下は下着と迷った末に黒のニーハイソックスを履いた。  だがサンタ服も肌蹴け、下着も取り払われてしまっている。どうせなら靴下も脱がして欲しいものだ。  「別に汚したって構わないだろ……」 「……ん、でも……ぁんん……」  くちゅりと樹の手の中でいやらしい音が立てられる、扱かれて赤く肥大した先端からは先走りが垂れそれは優志の内股まで濡らしていた。手の動きを休める事はなく、もう一方の樹の手も忙しなく優志の体を弄る。  胸から腰、そして腿の内側に樹の手が伸び、焦らす程ゆっくりとそれは動く。熱い手の平と意地悪く動く指先、どこをどう触れば優志の快楽が高まるかを知っているそれらは、今は悪戯に優志を焦らすだけ焦らした。   中心を扱かれても、後への直接的な刺激はまだない。にも関わらず慣らされた体は早くも樹を欲し、内側からじわじわと熱を溜め込んでいく。 「……う、ん……樹さん……」  指先が掠めるものの、中へは侵入してこない樹の長い指。それはただ薄い皮膚の上を擽るような柔らかいタッチで撫でている。だがそんな微妙な接触さえも優志は身悶えた。早く奥へ来て欲しい。ただそう思うだけで、腰が揺れ蕾は妖しく蠢く。 「……えっ……や、樹さん……ぁんん……!!」  先程まで樹の指先が掠めていた場所に、突然生温かい感触が触れる。  ぬるりとしたそれはまさかと思うが……と、優志は頭を上げて自分の下半身に目を向けた。  そこには予想通り自分の股間に顔を埋めている樹の姿があった。 「や、だめぇ……いつ……ひゃ……!」  窄まったそこを押し拡げるように樹は入り口を舐め、柔らかくなったそこへゆっくりと長い指を沈めた。 「……や、だぁって……樹さん……」 「……嫌?嫌とは言ってないぞ、ここは……」  クスクスという笑い声と共に入り口を舌先で突付かれる。  見透かされている事が恥ずかしい、嫌だと言っている自分の言葉は甘えてもっと欲しいと言っているようにしか聞こえないからだ。  指は2本から3本に増やされ、扱くだけだったペニスは樹の口に咥えられ優志は段々と追い詰められていった。 「や、も……ん、だめぇ……」  恥ずかしい位に媚びた甘ったるい声が出てしまう。ぐずぐずに溶かされたのは体だけではなく、アルコールの力も加わり理性をも溶かし始めていた。 「……いけよ、優志」 「……!」  低く、でも優しく促す声で優志は達した。優志の滾りを口の中で受けた樹は見せ付けるようにそれを飲み干し、最後にゆっくりと唇を親指の腹で拭った。その動作にすら色気を感じてしまい、達したばかりだというのに優志はまた熱が篭ってきてしまう。  射精後の倦怠感のままに、まどろみそうになった優志の体を現実に戻したのは、後孔に入ったままの樹の指だ。弱い所ばかりを攻めていた指は、最後に強く最奥を突いて抜かれた。 「……ぁう、んん……樹さん……オレも……」 「オレも?」   余裕の表情で見下ろしてくる樹の顔は少しだけ意地悪く笑んでいて、それでもそんな表情にすら優志は欲情してときめいてもしまう。ドキドキと早鐘のような鼓動はきっと樹に触れられている間、治まる事はないだろう。 「樹さんの、するぅ……」  気怠い体を起こそうとするが、簡単に樹の手に阻まれてしまい、少しだけ浮いた背中は再びシーツに押し付けられてしまった。 「いいよ……」  お前はそのままで。言下にそう言っているようなキスが頬に落ち、優志の足は樹の肩に抱え上げられる。黒いソックスを履いた両足を抱え上げられ、さっきまで弄られていたそこは赤みを帯び卑猥に蠢いていた。 「見たら、……いやぁだ……」 「……嘘、見られるの好きだろ?」  枕元に転がっていたローションを優志の尻に垂らし、それは引力に従いゆっくりと蕾と再び兆し始めた優志の分身にも流れ、糸を引きながら腹に垂れた。  再度解すように樹の指が優志の中に沈むが、それはただ優志の熱を煽るだけに過ぎない。そしてそれを樹は分かってやっているので、性質が悪い。 「……んん、あぁー、も、や……いつ、きさん、早く……」 「……もう少ししたらな……」 「やぁ……」  ローションを足しながらも指は優志の中を掻き回す、その度に粘着質な水音が室内に響く。エアコンの着いていない部屋は、最初肌寒さすら感じたのに、今は汗ばむ程の熱気を感じる。 「……はぁ……」  同じく枕元に用意してあったコンドームのパッケージを一つ取り上げている樹に、優志は定まらない視線を向けた。 「……樹さん……」 「ん……」 「いい……きょう……」 「今日?」 「……ゴム、つけないで…」  目を見張り驚いたような表情を作ったのは一瞬で、樹の顔には困ったようなそれでもどこか嬉しそうな表情が浮かんだ。 「……いいのか?」 「……ん、欲しいの……」 「……ん?」  潤んだ瞳は媚を売っているにしては真摯で、掠れた声は小さく震えていた。 「……樹さんが……全部、欲しいから……」  ぎゅっと瞑った優志の目からぽろりと一粒涙が零れ落ちる。この先は言えないから、だから。 「優志……」  閉ざされた瞼の上に羽毛のような軽いキスが降る。それが合図だったように、優志の中に樹の逞しいものが入り込んできた。  押し拡げるようにして最奥までずっぽりと樹が沈む、その重量も圧迫感めいた痛みも優志には全てが愛しかった。まだ入れられたばかりで、下腹部を襲うのは快楽よりも痛みが強かったが、それでも熱をもっともっと高めて欲しくて、優志は強請った。 「……樹、さん……うごいて……」  返事はなかったが、了解したのか樹は直に腰を遣い始めた。  足を抱え上げられているせいで結合部が優志から丸見えだ。出し入れされる度に樹の赤黒いペニスと、それを離すまいとしている自分の粘膜も完勃しているペニスも見えているのは恥ずかしい。でも、繋がっている事が体内と視覚とで実感出来る。  体を折り体重を掛けるようにして樹が奥深くへ突き刺さる。そこを起点として円を描くように腰を遣われ内部が捩れるような感覚に優志の中が熱く蠢く。  更に樹が覆い被さるような格好をしてきたので、優志のペニスは樹が動く度に腹筋に擦られるのでその快楽は倍増していた。 「あ、ん、だめ、やぁ……んん…いつきさん……いつき……さん!」  激しいピストンに優志の口からは甘い喘ぎが止まらない。ぎゅっときつくシーツを握り締め、快楽の波に溺れまいとするが、理性なんて残らず掻っ攫われてしまいそうだ。  ただただ揺さぶられるままに快楽を享受し、高まりきった熱は早く放出してしまいたいと優志を急かす。 「も、やぁ、だめ……樹、さんん……いっちゃう、いっちゃう……よぉ……」  何故出てくるのか分からない涙を零しながら訴えても、樹が動きを止める事はなかった。だが時折宥めるようなキスや優しく頭を撫でてくれる。それでも塞き止められない濁流に飲み込まれ優志は絶頂を迎えた。 「あぁんん……いつ、き……」  さん、と言い切れない内に唇が重なる。ねっとりとした濃厚なキスは二度目の絶頂に蕩け出した体を更に溶かす。弛緩した体に命令を出し、力の入らない腕で樹の背中を抱きしめる。 「……優志……」 「はぁ……も、だめ……気持ちよ過ぎておかしくなる……」  整いきらない息のままに、ぎゅっと力の限り樹を抱きしめる。だが、上手く力の入らない腕ではただ添えられている程度だ。 「……止すか?」 「……ううん」  だってまだ樹さん、いってないし……。  ぼそぼそと答える。体内に残る樹はまだ硬質なままで居座っている。このままでは辛いのは同じ男として分かるし、それに……。 「ぜんぶ、欲しい……」  すりっと樹の胸に頬を寄せる、猫のような優志の仕草に樹がそっと微笑む。優しいその微笑みは優志には届かなかったけれど、呼ばれた名前に籠もった甘い温もりだけで優志の胸は打ち震えた。 「優志……」  好き。衝動的に口走りそうになったそれを慌てて噛み殺し、そのまま樹の胸に縋りつく。樹が満足するまで抱いて欲しいと、その腕に込めて。 「……樹さん……」  目元が赤く染まり潤んだ瞳で見上げてくる優志に煽られるように、樹も優志の体をきつく抱きしめた。 「優志」  見詰め合う二人の間に名前を付けて結べる絆はないけれど、それでもそれを埋めても有り余る程の熱量で今夜は。  再開された律動に甘美の声を上げながら、きっと今夜の事は一生忘れる事はないだろうと思った。  大好きな人と初めて過ごしたイヴだから。

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