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第33話
「……脱ぐ必要はないと思うんだけど……」
「セックスするんだから服は脱いだ方がいいだろ?」
「……するのはいいんだけど、耳は外すよ?」
「したままじゃないのか?」
「したまましないよ!!」
「いいだろ、オレの写真撮ったじゃないか」
「……」
何だか良いように言い包められている気がする。
寝室に移動し、二人は今ベッドの上に居た。
セックスするのは構わない、でも頭の上にある猫耳は外したい。自分では見えないけれど、酷く滑稽な事に違いない。
「優志」
優しく囁きくながら樹は腕を伸ばしてきた。その腕に抱きとめられ、ベッドに押し倒される。
手の平が優志の頬を撫で、そのまま耳から髪と頭の上の猫耳に向かう。ふさふさとした触感が気持ちよかったのは触って分かっていたけれど、それを付けて撫でるのはどうだろう。
……直接頭とか撫でて欲しいのに……。
猫耳に視線があるのも、物足りなさを感じる。自分を見て欲しいのに。
でも、言えない。言える訳なかった。
「……樹さん……」
腕を伸ばし、樹の首に抱きつく。早く始めて欲しいと懇願するように、腕に力を込めた。
耳なんか後にしてくれ、自分を触ってくれ。心でそう願い、誘うように樹の瞳を見つめる。
目が合うと眼鏡の奥の瞳が細まり、口元には薄く笑みが浮かぶ。雄臭いその顔が優志は好きだった。
「優志……」
樹が眼鏡を外し、ベッドの横にあるサイドボードの上に置く。それを待てずに優志は樹にキスを強請った。
***
「……はぁ……んん……」
全身を丹念に愛撫され、仕上げとばかりに樹は優志のペニスを咥えながらローションに濡れた後孔にも指を伸ばす。
弱い所を吸い上げ、舌先で突付かれる度に限界が近付き、樹の指が入り込んでいる蕾はきゅうきゅうとそれを締め付ける。
「……いつ、きさん……ぁあん……や、そこぉ……!」
違える事無く、樹の指は優志の中で感じる箇所を擦りあげる。始め1本だった指は徐々に増やされ、今は3本が優志の中を蠢いていた。
奥をずっと捩られながらフェラされては長くもたない、程なく優志は樹の口の中に欲望を吐き出した。
「はぁ……はぁ……」
ベッドに重い体を横たえたまま、優志は樹に視線を向ける。目が合うと、見せ付けるように口の端を拭われた。
「……いつき、さん……オレも……」
「休んでからでもいいぞ」
「ん……へいき……」
体を起こし、樹の前へ移動する。既に立ち上がったものを両手でまずは緩く扱く。
質量の増す樹を愛しげに見つめ、優志は体を倒し口を近付けた。
鈴口にキスしてから全体を口に含む。口を窄め、吸い上げる、それを何度か繰り返してから樹を口から放した。
「……優志」
形に添うように舌を這わせて舐めあげていると、樹の手が優志の頭を優しく撫でた。
髪を軽く撫で、それから頭の上の猫耳に優しく触れる。
そうだ、うっかりしてた、まだ頭に猫耳あったんだ……。
一回達した事ですっかりぼうっとしてしまったようだ。猫耳で奉仕なんて、風俗みたいだ。
やはり猫耳は外して欲しいと言おうと樹を見上げると、満足そうな顔でこちらを見ている樹と目が合った。
「……樹さん……」
猫耳を撫でながら目を細めて笑う樹の瞳は獰猛な色が光る。獲って喰われそうな瞳の色に怯みそうになる。
「……樹さん、やっぱり、耳……」
「似合ってるよ」
「……似合わないよ……」
樹の瞳を見ていると背筋がぞくぞくする。喰われる悦びに体が支配されそうで怖かった。
目を落とし、優志は行為に集中する事にした。
したのだが、樹の台詞に優志の集中力は途切れた。
「優志、にゃーんて言ってみろよ」
「……」
「にゃーん、てさぁ」
「言わないよ……!」
「何でさ、猫なんだから猫語を話さないと」
「猫じゃないってば!!」
「ほら、にゃーんて言ってみろよ、優志」
「……ド変態!!!」
フェラを止めて優志は力一杯罵った。
獰猛だった瞳は、今は揶揄うような色が濃い。遊ばれていると分かっていても、言わずにはいられない。
ホント、変態だ!そんなにやりたかったら風俗にでも行けばいいのに!!
「可愛いのに」
「……は?!」
「可愛いよ、優志」
「!!」
顎を取られ、そのまま噛み付くようなキスをされた。口内を蹂躙するように樹の舌は蠢き、優志を翻弄する。
「……んぁ……はぁ……」
唇が離れた時には息が上がっていた。だが、それが整わない内に優志の体はベッドに沈み込んだ。
「優志、言えよ……」
「言わないってば……!」
両足を肩に担がれ、浮き上がった腰を掴まれるとすぐさま挿入された。
ぐっと押し入ってきた雄芯は細い肉壁の中を容赦なく進む。焼けそうな痛みに優志は体を固くさせたが、それが快楽に変わるのを知っている体はその痛みが過ぎるのに耐えた。
奥まで入りこんだ熱塊は入り口付近まで引き戻されると、浅い場所を慣らすように出入りする。
「……ん、はぁ……」
時折掠めるように最奥を擦り上げられる他は、じれったい位に樹の動きは緩慢だった。
痛みは薄れ、代わりに疼くような快楽が競りあがってくる。だが、射精にはまだ程遠い。早くいつもみたいにしてほしい。
「樹さん……」
「ん……?」
「……も、もっと……してぇ……」
羞恥心で頬が朱に染まる。でも今のままではいつまで経っても達する事は出来ない。
微温湯のような快楽ではなく、もっとはっきりした快楽が欲しいのだ。
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