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第34話
樹の動きに合わせ、奥へと導くように優志は腰を擦り付ける。無意識のそれを見て樹は口元に性質の悪い笑みを浮かべた。
「猫語だって言っただろ?どうして欲しい……?」
「あぁぁん……そこぉ……!」
「ここ?」
「ぁあ、ん……はぁ、いつ、きさん……!」
下半身に熱が集中する。最奥を抉られて、自身を扱かれて痛い程の快楽が体中を襲う、もっと、とはしたなく緩んだ口からは強請るような甘い言葉が漏れる。
「いつきさん……ぁ、ん……はぁ……」
「優志……」
過ぎる快楽の逃げ場を探すように、優志の手がシーツの上を滑る。ぎゅっと握り締めたシーツの冷たい感触はすぐに生温かいものへと変わった。
「……はぁ、あ、や……樹さん…やめちゃ……や……」
また意地悪く狙いを外すようにして腰を遣う樹を睨み付けるも、相手にしていないようにニヤリと笑われてしまう。
「どうして欲しい……?言っただろ、猫なんだから猫語で話せって」
「……ねこ、じゃ……ないしぃ……!」
「ネコだろ」
そりゃ、ネコかタチかで言ったらネコだけど、樹の言う「ネコ」は「猫」じゃないか!
緩い出入りを繰り返し、さっきまで執拗に弄られていたペニスも放置され、優志の中の劣情は発散の場を見失っていた。
わざとやっているのだ、言わせたいだけだと分かっている。でも、癪に触る。
だけど、いつまでもこうやっていても射精は出来ない、燻る快楽に脳内がおかしくなりそうだ。
「いつき、さん……」
「ん?」
「いじわる、しないでぇ……」
「してないだろ?」
「……してる…………にゃ!」
「にゃ?」
「い、言ったよ!」
「言ってないだろ」
「い、言った…………にゃ」
「……なんで、ためるんだ…?」
数秒遅れて「にゃ」が付くのが樹はお気に召さないらしい。だが、優志とてそれが精一杯だった。
男としてのプライドギリギリがその数秒遅れての「にゃ」付けの猫語なのだ。
「樹……さん……も、やぁ……して……………にゃ」
消え入りそうな「にゃ」に樹は苦笑しながらも、優志の懇願を聞き入れてくれた。
濡れた頬から目の縁に零れた涙は樹の舌に攫われていく。キスが顔中に降り、最後に唇が重なると、優志は自分から舌を絡ませた。
「……はぁ……んん……」
キスをしながら樹は奥深く埋めた肉茎を大きくグラインドさせた。奥深くが捩れ、優志の愉悦に呼応するように樹を咥えている肉壁が伸縮する。
さっきまで焦らしていたのが嘘みたいに、樹は優志の中を激しく振り立てた。深部まで押し進められ、ガクガクと揺さぶられながら優志自身も樹は愛撫した。
とろとろと洩れているカウパーを指で絡めながら扱かれ、優志は限界に達した。
「あぁぁ……ん……」
白濁を吐き出し、どこもかしこも過敏になっている体の中を樹はラストスパートとばかりに腰を打ち付ける。
数度大きく貫かれ、樹は優志の中に欲望を吐き出した。
体の奥深くで樹の熱を感じ、優志は幸福感を胸に意識を飛ばした。
***
「……いつきさん……?」
「起きたか?」
「……ん……ごめん、オレ、寝ちゃった……?」
「……ちょっと無理させ過ぎたな……」
ごめんな、そう言って樹は優志の頭を撫でた。
さらさらと揺れる髪を労るように撫でられ、暫くはその感触にうっとりとしていた優志だったが、はっと気が付くとベッドから起き上がった。
「耳は?!」
撫でられいた頭に自分の手をやり、そこに何も無い事を確かめると安堵の息を漏らした。
「付けていた方が良かったか?」
「……違うし……」
「耳なら、ほら」
枕元に外して置いておいた猫耳付きカチューシャを取り上げ、再び優志の頭に装着させる。
「……」
「可愛いぞ」
「………かわいくない…………にゃ」
数秒遅れの「にゃ」に樹は楽しそうに笑った。
そんな笑顔を見ると、優志も胸の蟠りが消え失せるような気になる。
「これで猫耳役が来ても安心だな」
「……にゃ」
果たして猫耳役など回ってくるのだろうか、そう思った優志だったがそれは口に出さず嬉しそうに笑っている樹を飽く事無く見つめるのだった。
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