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第47話
ベッドへ移動すると性急に服を脱がされた。熱い手の平に体の表面を撫でられるだけで、優志の劣情は高ぶっていく。体を重ねるのは何時振りだろうか、随分と久しぶりだと思った。
着ていた物が全て床へ投げ出され、優志はベッドの上で生まれたままの姿になった。反して樹はまだ着衣に乱れたところはない。
「……久しぶりだな……」
優志が思っていたのと同じ事を考えていたようだ。頷くと、貪るように口付けられた。
「はぁ……樹さん……」
平らな胸を撫でるだけで、その手はそこから動こうとしない。いつもだったら乳首を悪戯に弄ぶのに、そこにすら触れてこない。
焦れたような視線で押し倒している樹を見つめれば、苦笑いが返された。
「……すっごく物欲しそうな顔してるぞ……」
「だって……」
「本当に久しぶり?」
「うん……」
「……他の誰かに抱かれたりはしなかったのか?」
優志は驚きの為に目を見開いた。
樹以外の誰とするのだろう。でも、樹とは恋人でもない、もしかしたらこの間幸介に言われたように、適当に遊んでいるように見られているのかも知れない。
それは少し哀しかった。
「……しないよ……オレ、樹さんとしか……」
樹だからなのだ。その想いを込め樹を見つめる。樹の笑みが深まり、またキスだけをされる。
今日は焦らしプレイなのか、ちっとも先へ進んでくれない。
「そうか……」
「ねぇ……樹さんは……した……?」
最後は消え入りそうになりながらも、優志は尋ねた。もし、イエスと答えられたらどうしよう。でも、恋人ではないのだ、それを責める権利は優志にはない。
ドキドキと待っていると樹は首を振って違うと答えた。
「ホント……?」
「嘘をついてどうなる?」
「……うん、そだね……ぁ!」
きゅっと乳首が微妙な力加減で摘まれる。あとほんの少しで痛みが勝るような、そんな絶妙な具合だ。
両の乳首を弄られ、キスで翻弄されると、久しぶりだという事もあり忽ち射精感が競りあがってくる。流石に触られていないのに達っしたりはしないが、そこは震えてとろりと蜜を流していた。
「じゃあ、一人でしてたって事か?」
耳元で囁かれ、熱い吐息を吹き込まれる。耳は弱いのだ、それを知っている樹は執拗にそこを弄る。
擽ったさに身を捩るが、樹から逃れられる訳もなく、耳朶を甘噛され小さな嬌声を上げた。
「なぁ、どうなんだよ……一人でするのか?お前も」
優志の頬が羞恥で赤く染まる。その表情を面白そうに眺めて樹は突然体を引いた。
「……樹さん……?」
そのまま優志の腕を掴み、上体を起こさせる。ベッドの上で半身を起こすと、優志は呆けたような顔で樹を見た。
まだ顔の赤みは取れない、それは樹の優志を見つめる瞳も原因だ。ベッドでしか見せない雄の顔が、意地悪く笑んでいる。
「なぁ、答えろよ、優志……してるのか?」
そんな事聞かないでくれと言いたいが、答えなかったらこのまま放置とか言い出されかれない。優志は恥ずかしそうに俯くと、こくりと小さく頷いた。
「じゃあ、おかずは?エロ本?AV?」
目だけを上げて睨みつけても、樹には威嚇にもならない。ただ愉しそうに笑うだけだ。
ホントにこういう所、意地悪だ。
でも、逆らえない。嫌ならこのまま部屋から出て行ってしまえばいいだけの話。だけど、優志にはそんな事は出来ない。
樹に嫌われたくない、というのもあるが、それ以上に樹が好きで、心のどこかではこうやって弄ばれたいと思っているのだ。あまり自覚したくないけれど、多分樹の嗜虐嗜好を自分は受け入れている。
……でも、自分はMじゃないと思う……けど……。
「優志」
命令とも強要とも、果ては懇願とも取れる。だって好きなのだ、樹が。どんな事でも応えたいと思ってしまうのだ。
「……どんな事考えながらオナニーすんだよ……」
「……い、樹さんと……したときの事……」
「へぇ……おかずはオレって事?」
怒っただろうかと心配になって見れば、満更でもない顔つきだ。とりあえず怒らせてはいないようなので、安堵する。
だが、樹の質問は終わらない。
「後も弄ったりすんの?」
「……え……?」
「指で弄ったり……あ、もしかしてバイブとか使うのか?」
「つ、使わないよ……!!!」
思わず叫んでしまった。樹は少し煩そうに眉を顰めたが、また直ぐにニヤニヤ笑い出した。
「じゃあ、使った事はないのか?」
「え?」
「バイブ」
「……うん」
「じゃあ、今度用意しとこうかな」
「え?!!」
「なんだ、興味ないのか?」
「……な、なくはないけど……樹さんは……したいの……?」
「お前が玩具で善がっていることろはちょっと見てみたいかも」
「……よ、よがんないもん……」
「そうか、善がんないか、じゃあ、試してみなきゃな」
満面の笑みでそんな事を言わないで欲しい。どうやら樹の中で玩具を使う事が決定されてしまったようだ。
不安はあるが、決めてしまった事を簡単に覆したりはしないだろう。
だが、それはまだ先だろうし、今日はそんな事をされたりはしないのだ。というか、早く続きをして欲しかった。
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