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第7話
何も言えずにいた優志を目線だけで風呂場へと誘導し、樹は脱衣場で全てを脱ぐとさっさと浴室の中へ入ってしまった。
「……」
去り際に早く来いよとでも言いたげな視線が送られてきたが、優志はそんなに直ぐ気持ちの切り替えが出来ずにいた。
お風呂一緒に入るって……しかも、こんな昼間から……。
躊躇いはあったが、ここでもたもたしていても始まらない。
優志は心を決めると、着ている服を手早く脱ぎ始めた。
「洗ってやるからこっちに背中向けろ」
「う、ん……」
裸なんて何度も見たし、触られてそれ以上の事もしているのに何で一緒に風呂に入るのってこんなに気恥ずかしいんだろう。
一つだけあった風呂用の白い椅子には優志が座った、座ったというか座らされたんだけど。
少し赤くなった顔を俯け優志は樹に背中を向けた。
泡立てたタオルがぬるりと背中を往復していく。背中だけでなくそれは首や脇腹にも伸ばされ、その度に優志は小さく震えた。くすぐったいのに、それが違う熱に変換されそうで身を硬くし堪えた。
「……あ、樹さん、オレも……え、ちょっ……ん、んん……!」
樹の手が急に脇腹を通り越し股間に伸びる。その事に驚きの声を上げる間もなく、指先に翻弄され下腹部に熱が集中していく。
「いつ、きさんてば……ちょ……っとぉ……」
樹の胸が密着するように背中から抱きしめられた。手は変わらず際どい動きで優志を追い上げていき、泡だけではなく硬くなった先端から先走りが溢れる頃には、樹のもう片方の手は上半身にも滑り胸の飾りもいいように弄られていた。
揉むように胸全体を撫で回した後、ツンと尖り出した乳首を弾くように爪先が掠めると、たちまちそこも熱を持ち下半身と同じように硬くなってしまった。
「……ふぁ、あっ、やっ、樹、さん……!」
切れ切れに口から洩れる声は甘さを含み、抵抗も出来ないままにその手管に落ちていく。それが嫌な訳ではないけれど、場所が場所だけに余計恥ずかしい。
「ね、樹さん……ここじゃ……」
「……ここじゃ……何だ?」
「や、だよぉ……」
「……ベッドまで我慢出切るのか……?」
耳の後ろに熱い息が掛かり、低音が甘く囁く。その声にぞくりと背筋が震え、疼きが樹に弄られている全ての箇所に走る。
「……あっ、はぁ……」
「……優志」
「んん……!」
緩急を付けて竿を扱かれ、責めるように先端を弄られる。それに合わせるように乳首も痛む程指先で摘まれると、一気に射精感が高まった。
ここじゃ嫌だと言いながら、樹の言う通りベッドまで我慢が出来ない。
ここまでされれば樹が最後まで止めないであろう事も分かる、だったら素直に快楽に身を任せてしまうのが一番だと分かるのに、それでも口から出るのは羞恥の為か、真逆の台詞だった。
「やぁ……ん、だめ、だって……」
「……分かったよ…」
樹は言葉と同時に手を離し、優志の体からも距離を置いた。
「……えっ……?」
引いた熱に振り返ると樹は自分の体を洗いだしていた。
「……え……?!」
「あぁ、自分で流せるな」
「……う、ん……」
呆然と見ていると、優志などいないが如くに黙々とタオルを使っている。
っていうか、酷くない?これ……この放置はなくない?!
いや、自分で嫌だって言ったんだけど……でも、さぁ……ううう、酷い、どうしろっていうの?樹さん……。
一人もじもじしていると後ろで噴出すような笑い声が聞こえた。
「……樹さん……!」
勢いよく顔を向けると、体を曲げて樹は笑っていた。浴室内に楽し気な笑声が響く。
「樹さん!!」
「……くく……っくくっ……ははは……」
「わ、笑すぎ!な、何で笑って……てゆか、酷いし!なっ、何でこういう事……放置とか!酷いし!!」
「お前が止めろと言ったんだろ」
まだ笑いが治まらないようだったが、長い手が伸びて優志の肩が後に傾く。後に倒れる前に温かい肌同士が触れると、頭の上にはクスクスと可笑しそうな笑い声が降ってきた。
「……樹さん」
「…で、どうしてほしいんだ?」
「……わ、わかってる、くせに……聞くなんて……そんな事……!」
「お前の口から聞きたいだけだ」
「……意地悪」
シャワーの熱い湯が肩から背中へと伝わり白い泡を落としていく。滑らかな肌は極力日焼けを避けているせいで白く、火照った体は先程の瑞々しい果実のように桃色に染まっていた。
「……続き、して……」
「……ベッドでか?」
「……樹さんは……?待てないんでしょ……?」
「あぁ……そうだな」
上腕から滑るように樹の手先が往復し、肩からまた腕を通り脇腹へと滑る。濡れた手でまた先程のように胸の飾りを弄られれば、今度こそ堪えずに甘い声を漏らした。
「ふぁ、あ……ん、んん……」
「優志……」
吹き込まれるように耳元で低音が囁く。耳の裏からゆっくりと舌が這い、耳朶を甘く食まれながら両方の乳首を引っ張るようにして摘み上げられた。
「んん……」
体重をほぼ樹に掛け、優志は与えられる愛撫に身を委ねた。だけど、さっきから肝心の所に樹は刺激を与えてくれなかった。焦らすように淡い茂みにまでは指が掛かるのに、天を向いた欲望には一切触れてくれないのだ。
「……いつき、さん……」
キスを強請るように首を捻り樹に顔を向ける。樹は目を細めゆったりと口の端を上げると、優志の唇を塞ぎ舌を滑り込ませてきた。
深いキスに息苦しくても、それでも貪るように優志は樹の舌を求めた。
「……ん、樹さん……」
好き…。
言葉に出来ない想いを胸の内で呟き夢中で舌を絡ませる。キスの間も疎かにならない樹の手首に自分の手を重ね、その熱を最も欲しい場所に導く。樹はすんなりと優志の望むままに欲望の在り処に手を置いた。
「……優志……」
「……し、してよぉ……も、ずっと…放置なんだもん……ひどい……よ」
「分かった、ごめんな、優志」
悪いだなんて全く思っていないような顔だったが、それでも漸く与えられた快感に優志の体は素直に反応した。
「ん、あん……」
だらだらと零れる先走りに樹の手が濡れ、それを更に擦り付けるようにして指が動く。高まる射精感に優志は瞼をぎゅっと閉じた。
「あっ……いつきさん……も、だめ、でる……!」
「いいぞ……出せよ……」
「……あぁぁ!」
一層強く扱かれ、優志は樹の手の中を白濁で濡らした。
力の抜けた体を樹に預けると背後からぎゅっと抱きしめてくれる、それが嬉しくて顔を逸らし甘えるようにキスを強請った。
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