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第11話
熱塊を穿たれながら、優志は自らのペニスをシーツに擦り付けていた。無意識に腰が動き、更なる快楽を貪っていたのだ。
「あ、もぉ……だめ、で、出ちゃう……樹さん、いつ……」
「優志……オレも、いきそうだ……」
背中に樹の熱を感じ、耳元で囁かれた低音に弄られたように優志の体が震える。
「樹さん……あ、ふぅ……あ、あん……!!」
扉が開け放たれる解放に似ている。熱い楔はぴったりと鍵穴に入りそこを間違いなく開けた。
頭の中が真っ白になる。体から力が抜ける程の快楽に包まれ、その余韻の中優志は体の奥で樹が果てるのを感じた。
「……優志」
ゆっくりと樹が体の中から抜けていく。本当はずっと中に居て欲しいと、いつも言いたくなるのを我慢する。
「……樹さん……」
シーツから顔だけを上げ隣の樹を見上げる。額に張り付く前髪をかき上げると、樹は深く息を吐き出した。
「疲れたか?」
「……ん……喉、渇いた……」
「あぁ、そうか、ちょっと待ってろ」
樹はそう言うなり裸のままベッドから飛び降り、寝室から出て行ってしまった。
残された優志は火照る体を横たえたまま、ぼうっと寝室のドアを見つめていた。
待たされたのは一分あっただろうか。樹がミネラルウォーターのペットボトルを2つ持って入ってくると、優志は自分が樹に飲み物を要求してしまった事に思い至る。
「……あ、ごめんなさい……オレ……」
漸く体を起こすと、樹はその隣に腰掛けペットボトルを差し出してきた。
「どうした?何で謝る?」
「……だって……取りに行かせたみたいで……」
「あぁ…そんな事はない、オレも喉渇いたしな」
笑顔に偽りはなさそうだが、気を遣わせたのは確かだ。優志は謝罪の言葉は言わずに今度は礼を言った。
「ありがとう……」
「どういたしまして」
貰ったペットボトルはよく冷えていて、優志は半分程を一気に飲み干した。
はぁ、と息を吐き出し漸く人心地つく。
でもまだ喉の渇きは完全に癒えたようには思えなく、また一口含む。
「よっぽど喉渇いてたんだな……」
「うん……」
「まぁ、飲んだ後って喉渇くよな」
樹の言葉に優志はどきりとする。飲んだ、というのは珈琲や紅茶の類ではあるまい。
「……オレ、今日そんなに飲んだっけ……?」
おそるおそる樹に確認すると、何を今更と呆れたような表情で答えてくれた。が、その事実に優志は驚くよりも悄然となる。
そんな気はしていたが、また、やってしまったのかと。
「……オレ、そんなに飲んでた……?」
「あぁ……悪い、オレが勧めたんだ、お前がそんなに落ち込む事はないよ……悪かったな」
日本酒一升瓶を二人で開けて、更に焼酎まで飲んだ……らしい。
樹も飲むが、酒豪という程飲む訳ではない。多分自分が大半を胃に流し込んだに違いない。
今朝反省したばかりなのに、もうこれだ。自分の意思の弱さが嫌になる。
「お前、禁酒とか言ってたもんな」
「……うん、だからもう、飲まない!」
「……ごめんな、オレもこれからは気を付けるよ」
優しい手の平が頭を撫でる。子供にするような仕草だが胸に小さな明りが灯る。
「何か、オレ……飲み始めると楽しくなっちゃうみたいで……あと、記憶いつもないし……」
言っていて情けなくなる。なんだ、この駄目さ加減は。
「まぁ、大分開放的にはなるみたいだがな……」
「お、オレ、脱ぎだしたりした……の……?」
「……いや、脱ぎはしなかったけど……」
「けど?」
「覚えてないか?」
「……覚えてない……てゆか、なんで樹さんとシタのかもよく覚えてない……」
「覚えてないのか……」
苦笑されたが呆れているようではなく、面白がっているように見える。
「まぁ、あれだけ飲めばな……」
「オレ、変な事言った?!」
「変な事?」
「……覚えてないから……」
「変な事は言ってない、いつもより積極的でちょっとびっくりしたけど」
「!!」
「お前外では絶対飲むなよ、オレだったから良かったものの……っていうのも変だけど」
「……大丈夫、ホントもう飲まないし……」
朝聞いたような台詞を又言われてしまった。それも樹にだ、情けない。
飲まされた感はあるが、呑まれたのは自分だ。
もう飲まない。
朝も言って、今もそう言ったけれど以前にもそんな事を言ったような気がする。
いや、以前ではなく……?
「オレ、ホントだめだ……記憶飛ぶってやばい……」
「そんなに落ち込むなよ、オレも悪かった、多分……飲み始めたら止まらないだろうなとは思ってて飲ませたし」
「え?!」
「だってお前いつもそうだろ、で、酔ったままセックスすんのだっていつもの事だし……酔った優志がちょっと見たかったっていうのもあるから、やっぱりオレが飲ませたって事になるのかな……」
「別に酔ったオレなんて見ても面白くないでしょ……」
口を尖らせる優志の唇にちゅっとキスを落とすと、樹は笑顔を浮かべた。心の読めない、読ませない笑顔だった。
「見たかったよ」
それは悪戯に優志の心を掻き乱した。
「酔った優志は可愛いから」
酔っているのは、オレか?それとも樹さん?
「可愛いよ、優志」
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