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第56話
「……う、ん……」
一生懸命といった顔で樹を頬張り、奉仕する優志の髪を労るような手遣いで樹の手が撫でる。
喉の奥深く、自分で出来る限界まで咥え込み、樹を味わう。
「……優志……」
熱っぽい樹の呼び掛けに視線を上げれば、捕食されそうな強い瞳がこちらを見ていた。さっき見た優しい顔はなく、本能のままの雄の顔がそこにある。
ぞくりとした快感が優志の背筋に走り、知らず体が震える。
「もう、いいぞ、放して……」
樹の言葉に頷かず、優志は口に含んだままラストスパートとばかりに、唇を窄め樹を扱き上げる。
どくどくと脈打つそれは一際質量を増し、優志の口の中でどくりと震えると欲望の丈を吐き出した。
「……はぁ……」
「……優志……」
唇から零れた精液を拭き取るように、樹の熱い指先が優志の唇の端に触れる。拭き取られた淫液までも勿体無いとばかりに、優志はその手を掴み指ごと口に含んだ。
驚いたような表情を一瞬だけして、樹は優志にされるがままに指をしゃぶられ続けた。
「優志……」
「あ……」
気付いたように顔を上げ、手を放すと覆い被さるように抱きしめられた。そのまま後を向かされ、促されるままにタイルの上に四つん這いになる。
「……樹さん……」
振り返ると樹は少し待ってろと言って浴室から出て行ってしまった。この体勢で待っていないといけないのだろうか、と不安になった優志だったが樹は1分もしないうちに戻って来た。
手にはローションのボトルが握られている。まだ満タンなそれは脱衣所にストックとして置いてあるものだろう。
「優志」
尻をさらりと撫でられると、期待に染まる体は無意識に震えた。これからされるであろう行為を待ちわびるように、優志の後孔の中がじくりと疼く。
「……ん……」
後孔の表面を樹の滑った指が撫でる。慣れた指は優志の呼吸に合わせるようにゆっくりと中へ入り込み、熱い肉壁の中へと埋まっていく。
「……ふぁ……はぁ……」
くちゃりと粘度の高い音をたて、攪拌するようにくるりと指が動きながら引く抜かれ、また奥へと入り込む。ゆっくりと出し入れを繰り返しながら、入り口の柔らかさを確かめるようにまたもう一本指が増えていく。
「……あぁ!」
奥に入り込んだ樹の指が、優志の弱い場所を掠める。樹の指は更にもっと啼かせようと言うのか、集中的にそこばかりを攻めた。
「いつ、きさん……だめぇ……ぁあ、んん……」
強弱を付けて擦られると一気に射精感が高まる。だが後ばかりの刺激では射精までは至らない。優志は振り返り、懇願するように樹を見上げた。
「樹さん……」
「……すっげぇエロい顔してる……」
「も、やぁ……あぁ……ふぅ……ん……そこ、ばっかぁ……ぁあ!」
「だって、ここが気持ちいいんだろ?」
「ふぁ、あぁぁ……ん、いい……」
「じゃあ、もっと気持ちよくしてやるよ……優志」
「ぁあ……!」
引き抜かれた指の代わりに侵入してきたのは熱く硬質な樹自身だった。
奥深くまで差され、浅い所まで引き抜かれまた深く深く差し入れられる。その熱塊に擦り上げられる度に視界が霞む程の快楽が優志を襲う。
痛みよりも勝る快楽に溺れるように、優志は堪えきれず嬌声を上げる。
「ぁ、あ……いつき、さん……んん……!」
力強い抽送に合わせるように、樹をもっと深く迎え入れようと優志は腰を振った。肉のぶつかる音と二人分の荒い息遣い、生々しい粘着質な水音が浴室を満たす。
優志は快楽を貪るように、自身に手を伸ばし熱く滾ったそれを一心に扱いた。奥を擦られるタイミングで、自分の一番感じる場所を指で擦ると頭が真っ白になる程の悦楽が体を満たす。
「樹さん、も……オレぇ……」
「……ん?早いな……そうか、溜めてたんだろ……」
「ん、うん……いく、いっちゃう…」
「あぁ……いけよ、優志……」
「あぁぁぁ……!」
どくりと大きく脈打ち、優志の欲望が弾けタイルへと飛沫を飛ばす。数回擦り上げ、全てを出し切ると、苦しそうな息遣いで優志は背後を振り返った。
「……樹さん……」
「……まだ、終わらないぞ、優志」
「うん……」
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