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第5話
半休を使って俺は、仕事を早退した。新が姿を消したという事実を聞かされて、仕事に集中できない。とりあえず家に帰って、着替えたら新のアパートを見に行こう。
それから……。
「僕のどこがいけなかった?」
アパートの玄関のドアを開けると同時に、背後から口を押えられた。耳朶に息がかかって、心地よい低い声が聞こえた。
新? ちょ……どうして。
「ねえ、僕は何がだめだったの?」
中途半端に開いたドアに、押し込まれるように中に入った。玄関の扉が閉じると、すぐに鍵を新にかけられ、俺は靴も抜かずに押し倒された。
ガンっと盛大な音がして、背中に痛みが走る。
久しぶりにみる新は、ひげ面で汚いオッサンになり果てていた。どんなに忙しくても、身なりは綺麗に整えているのがあいつなのに。
着ている服もヨレヨレの疲れたシャツに、履き古したジーパンだ。数日剃ってないひげに、眠れてないのか目の下にできたクマ、こけた頬がヤバさを物語っている。
「え? なに……だめって、なにが?」
「僕たちはうまくいってた。もうすぐ三年目だって、藤原は喜んでた……なのに、なんで『別れる』って僕は、何をしたの? 藤原に嫌われるようなことした? いろいろ考えたけど、これしか思い当たらないくて」
ジーパンのポケットからメモリーステックを取り出した新が、俺に手に預けてきた。
「これ、は?」
「研究データ。藤原の好きにしてほしい」
「は?」
「いらないから」
「……え?」
俺の上に跨った新が、首筋に噛みついてきた。痛みでくぐもった声があがる。
「ちょ、ちょっと、新……待てって」
俺が別れるってメールを送ったから?
追い詰められているのか?
「僕は別れない。だから、抱く。どれだけ藤原を好きか……身体に教えてやる」
「ちょ……んぅ、あっ!」
ワイシャツ越しに、二つの突起を摘ままれて、俺は甘い声があがる。
「やめ……新!」
「やめない。僕なしじゃ生きていけないって、ここに教えこまないと」
ズボンの上から、尻の孔に指をたてた。びくびくっと腰が震えて、俺は身悶えしてしまう。しばらくシテない身体は正直すぎて、嫌になる。
きちんと新と話をしなくちゃなのに、股間は熱をもち、後ろの口はヒクついて新の熱を欲しがっている。
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