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第7話(*)
「っ……!」
かろうじて悲鳴は免れましたが、わたくしは慣れない視線を脚の間に感じ、思わず顔を背けました。下帯をつけていないこと……、もっと言えば、彼への愛撫を想像しながら、わたくしが欲望を感じていることが露わになることは、前の御主人さまにとっては、あってはならぬことでした。
が、気をやる時に後ろを使われると、わたくしはどうしても感じてしまうようなのです。また、感じないまま後ろを使われたのでは、身体がつらさを訴えて、切なくなるのでした。ですから、発情することを厭うた以前の御主人さまは、わたくしを決して前から抱くことはありませんでした。
ですので、彼にその様を見せつけてしまったことに、わたくしの心はぎりぎり音を立て、罪悪感と羞恥心で胸が抉れる気さえしたのでございます。
「ごめ……なさ……っ」
わたくしが思わず拙い言葉を絞り出そうとすると、青年は深い溜め息をつき、再びわたくしの秘部へ視線を落としました。まるでじりじりと焼かれるような眼差しに、たっぷり数十秒は耐えさせられた末に、彼は喉の奥を絞るような声を出しました。
「……想像しただけで、こうなるのか」
「っ……」
「誰に躾けられた? 遊郭の楼主にか」
「いえ……」
「では柏木公爵のところでか」
「……」
前の御主人さまの名前を出され、わたくしがかすかに頷くと、青年は奥歯を噛み締めたようでした。
「淫らだな」
その声が掠れていたので、わたくしは怖いもの見たさで少し瞼を持ち上げました。
「きみを抱いた方がいいのだろう。だが、俺は……、きみの前の主人を恨むぞ……」
言っていることの意味がわかりかねましたが、わたくしの失敗が元で、前の御主人さまが恨まれるのでしたら大変申し訳ないことです。わたくしは震えながら、失敗の咎を受ける用意がある旨を申し上げましたが、彼は全くわたくしを折檻する気はないようでした。どころか、わたくしの先の御主人さまを悪しざまに言うので、わたくしは思わず両手で彼の口を塞ぐという所業に出てしまいました。
申し訳なくて、消え入りたいと思いながら、それを実行できない自分の弱さをわたくしは恨みました。このまま何のお役にも立てず、生き長らえることに意味などあるでしょうか。わたくしは、絶望的な表情をしたのかも知れません。涙がぽろぽろと溢れては零れ、頬を濡らしてゆきました。
涙で滲んだ視界に、
「つらいのか」
と青年は尋ねてくださいました。
つらいのはわたくしが役立たずであることに対してで、こうして彼に気遣われることに対してではありません。
わたくしが首を振ると、彼は唇を噛んで何か言いたいことを堪えていましたが、やがて、
「……これは、俺の我が儘だが」
と砂を噛むような口調で仰られました。
「俺の我が儘だから、嫌なら嫌と言っていい。お前を、抱いてもいいか……?」
不思議な方だと思いました。わたくしの身体が、男を求めているのは明白でございます。上を向いた芯はあさましく涙を流し、後蕾は触られてもいないのに、きっと朱くひくついていることでしょう。青年の腹に少し擦れただけで声を上げ損なうほど感じているのに、抱かれたらどうなるか、かすかに頭の隅で警鐘が響きましたが、わたくしはこれ以上、我慢することができませんでした。
昼間にお風呂をいただいた時に、後ろの処理はしておりましたから、おそらく柔らかく綻んでいることでしょう。
前の御主人さまはきつくていい孔だと褒めてくださいましたし、このまま部屋に戻り、ひとりで前を弄って処理しても、後孔の疼きをおさめることは最早できないと思ったわたくしは、青年の問いに、
「はい」
とだけ答え、恐れ多いこととは存じましたが、彼の背中におずおずと両腕を回しました。
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