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第3話

 サービスということで貰ったショートケーキをフォークで刺して、口に運ぶ。  甘い、ウマイ。やべぇな、クリームとかイチゴとかの匂いが鼻をス~って通ってく。この味の匂いを香水にした女がいたら抱きたい。勿論、スタイルはボンキュッボーンで!  パクパクとショートケーキを口に運んでいると、アリスクンが考え込むの代表的仕草……顎に指を当てている。 「『性夜』に『ホワイトクリスマス』……ですか」 「まだ早い話だったか? 分かんないならそれでいいぞ!」 「いえ、ちゃんと分かりますよ」  ショートケーキを一瞬で食べきり、コーヒーを啜りながら語り掛ける俺に、アリスクンは笑みを浮かべながら答えを返してくれる。愛想の塊だ。 「エッチなことができなかったから、お兄さんは落ち込んでいる……で、合ってますか?」 「ビンゴ!」  ありていに言ってしまえばそういうことさ。  彼女がいないフリーの男というレッテルなんざどうだっていい! 俺はロリ巨乳とセックスできなかった現実が辛いだけだ! せっかくのおっぱいチャンを逃した俺のバカヤロウって気分なんだよ!  だからやけ食いならぬやけケーキだ。つまりは、やケーキ。やケーキウマイ、最高。  俺から正解だと告げられたのが嬉しいのか、アリスクンはニコニコと笑っている。 「間違えてなくて良かったです」  オマケに、そんな可愛いセリフまで付けて。  完全に男だとは分かるんだが、どこか可愛く見えるアリスクンは満足そうに笑いながら俺を見て、口を閉ざした。俺もつられて、口を閉ざす。  …………何だ、この間は。  会話を探そうにも、これ以上話すこともないしな。誰かに話せて、僅かながらに胸がすっとした。アリスクンには感謝だ。  やケーキをする必要性も薄れてきたし、特に話したいこともないのに沈黙で座っているのもイヤだったから……俺は会計をしてしまおうかと思い、席を立とうとする。  ――と、そのタイミングでアリスクンが口を開いた。 「……ねぇ、お兄さん」  名前を呼ばれたから黙って座っていると、アリスクンが席を立った。  カツカツと俺に歩み寄り、耳元でねっとりと囁く。 「よければ……ボクが今晩、慰めてあげましょうか……?」  性欲とは無縁そうな見た目をしていたアリスクンが俺の耳元から離れて、俺を見つめてくる。  ――その瞳は、熱っぽく潤んでいた。  思わず、生唾を飲み込む。 「……意味、分かってんのか……?」 「勿論ですよ」  アリスクンはテーブルに置かれた俺の手を軽く握る。 「……お兄さんなら、いいかなって。……お兄さんのこと、慰めたいんです」  お客様想いなのか、意外とビッチなのか、それともまさかまさかで俺に一目惚れなのか……どの可能性も捨てきれないが、アリスクンは冗談を言っているようには見えない。  正直な話、俺はホモじゃない。普通におっぱいの大きな女の子が好きだ。マシュマロみたいに柔らかくて、生クリームみたいに優しくていい匂いがする、本当に女って感じの女。  ――でも、この子なら抱けそう。  クリスマスイブに一人寂しく過ごすのも癪だったので、俺はアリスクンのお誘いを受けることにした。

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