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第6話
突然の予想外過ぎるカミングアウトに、俺はやっと状況をハッキリ理解した。
抱くのは俺じゃない。
俺は、抱かれる側だったんだ……!
「ハァッ? マジでふざけんなッ!」
冗談じゃない。俺は今日、誰かに突っ込むことしか考えてなかったんだぞ?
それなのに……俺が抱かれるなんて、冗談じゃねぇ!
嫌悪感と不快感をしっかりとアピールして、俺はみじろぐ。いつの間にか立場が逆転しかけていたが、もう一度アリスクンを押し倒して突っ込めばいいだけだ。俺はひとまず、アリスクンを跳ねのけようと胸を押してみた。
――が、びくともしない。
「お兄さん、何してんの?」
「いや……え、は……え?」
「もしかしてだけど、ボクのこと……押し退けようとしてる?」
いくら俺が下にいて不利だとしても、これはおかしい。
相手はどう見たってガキだ。俺は成人男性だぞ。ハンデがあったとしても、力で負けるはずがない。
なのに、どうしてちっとも動かないんだ……っ?
必死に抵抗を試みる俺を見下ろして、アリスクンは可笑しそうに笑みを浮かべる。
「アハハッ! ざ~んねんっ。ボク、結構力ある方なんだよね~」
そう言うや否や、アリスクンは胸を押す俺の手を軽くいなし、あろうことか俺が着ている服に手をかけてきた。
「ちょ、待てよ!」
「ん?」
可愛い顔で俺を見て、アリスクンは小首を傾げている。
だが、手は止まらない。
着ていた上着は開帳されるし、インナーはめくられている。もうコレは圧倒的にそういう流れになっていて……!
「おまっ、マジでふざけんなよッ! ガキのくせして、大人をからか――」
相手はガキだ。ガキなんてのは大人に怒鳴られたら萎縮するもんだろう。ソースはガキの頃の俺だ。
――が、予想外の反応が返ってきた。
「――あァ? 今……『ガキ』っつったのか?」
瞬間。
背筋が、ヒヤリとした。
「え、ぁ……っ」
情けないような、声にならない声を漏らすしかできない。
何故なら……アリスクンの瞳が、恐ろしい程冷たいものになっていたからだ。
冷酷な瞳は、数分前まで可愛らしく愛想を振り撒いていた店員と同じ人物とは思えない輝き。ハスキーな声もどことなくドスの効いた声になっているし、何よりも纏うオーラが違う。
本能で察する。
――殺られる、と。
「はッ! 乳臭ぇガキが。何いっちょ前に吠えてんのかと思ったら……年上には敬意を示せバーカ」
「は? な、と、年……う、え?」
「こちとら三十路だ。事実確認してからものは発言しろっつの。クソガキが」
吐き捨てるような言葉の後に、アリスクン――サン、は……またもや愛らしく微笑みやがった。
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