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第9話 *
挿入された三本の指に違和感がなくなった頃……アリスサンはようやく、指を抜いた。
「は――あ、ぁ……ッ」
「はッ、惚けてやんの。……ショートケーキ一個貢いだ甲斐あったな~」
「な、に、言って……ッ」
「声がブサイクなのはこの際見逃すよ。声なのに『見逃す』ってのも変だけどさ~」
言っている意味が分からない。
――そう思ったのは、一瞬だけ。
不思議の国のアリスが着ているような、エプロンドレス。依然そんな衣装に身を包んだままのアリスサンは、おもむろにスカートをたくし上げた。
「最高の性夜にシてあげる」
そう言ってアリスサンは――男物の下着から、オスの象徴を惜しげもなく晒したのだ。
――って、え、は? ……デ。
「デカすぎだろッ!」
思わず声が出る。いや、いやいやいや!
ソレはマズいだろッ!
可愛くて華奢で男だけど見ようによっては女の子に見えなくもない儚い美少年……アリスサンは、見た目だけならそんなステータスだ。
だが、完勃ちしたアリスサンのオスは……よく言えばギャップ、悪く言えば詐欺でしかねぇッ!
あまりの驚愕っぷりに目が離せないでいると、アリスサンはいつの間に用意したのか手にしていたコンドームを慣れた手付きで装着し始めたではないか。
「な~に? そんなジロジロ見られるとさすがに照れるんだけど」
「いや、おまッ、ウソだろ待てって落ち着けッ!」
「マジブーメラン乙」
可愛らしいデザインのスカートとは似つかわしくない男の象徴を握り、アリスサンは空いているもう片方の手で俺のケツを持ち上げた。
――それはつまり、抱くということ。
――つまり俺は、抱かれるということだ。
「バカかッ! もしくはバカかッ! あるいはバカだろバカッ! ムリムリムリッ! そんなのぜってェにムリだっつのアホッ!」
「って思うじゃん? か~ら~の~?」
「そんなテンションで突っ込むサイズじゃねぇッ!」
全身全霊で暴れ出す俺を気にした様子もなく片手でいなすアリスサンは、しっかりとほぐされた俺のケツに、とんでもねぇ凶器を押し当ててくる。先端だけでも恐怖しかねぇッ!
「ま、待て待て待ってッ! 待って下さいお願いしますッ!」
「あはっ! お兄さんってほ~んと、かっわい~」
「顔とセリフは可愛いけどブツがこえぇッ!」
ニコニコと愛くるしい笑みを浮かべたアリスサンは、俺の耳元にまたもや顔を近付けてきた。そして、脳みそに響く官能的な声で囁く。
「お兄さん、安心して? ボクはお兄さんみたいな処女ビッチを……虐めたいだけだからさ」
――何をどう安心しろって?
そう訊ねようとした口からは、別の言葉が漏れ出た。
「――が、はッ!」
――凶器を突き穿たれたことによって押し出された、悲鳴だ。
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