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ワックスで固めた金髪をいじりながらこっちを見てくるのが怖い。 見透かされるんじゃないだろうか。 会長と揃いの時、彼は借りてきた猫のように大人しいのだが、こうして会長のいない場では普通の不良と変わりない。 むしろ、俺からしたら普通にカッコイイし、普通に良い奴だったりしなくもない。 「何もないよ…?」 「誤魔化すの下手かよ。…龍星さんとなんかあった」 「え、なにそれ」 「噂って凄いよな。一瞬で広まるしさー」 「あったとしても…君には分からないよ。俺の複雑な気持ちなんて」 やばい、なんかグッときた。 泣くまではいかないけど…とにかくヤバい。 自分で言ってて情けなくなってきた。 「ま、龍星さんって毎日違う人と何かしらやってて好きになったら苦労するよな〜。話くらいはいつでも聞くから。手くらい貸すし。あんたって人に助けを求めるとか苦手そうだよな」 「お、お前に言われたくはない!!いいか、その時が来たらこき使ってやる!!」 「ブハハハハッ…俺暇だしな、いいぜ〜」 何なんだ、皆して。 俺はそんなにも分かりやすい顔してるのか。 噂は一気に広まるし。 女子ってほんとそういうの好きだよな。 ありたいけど。 早足に下駄箱に向かう。 好きだが…俺自身が認めたくないのに、周りから認められたら認めざるを得ない。 自分の行き先が分からない。 伊藤龍星には伝わらない。 バカみたいに不毛だ…。 「おい」 どうせ、鬱陶しいって嫌がられて終わる。 「っ…聞けって!暮沢充!」 ガシッと肩を掴まれてしまう。 ほっといてほしかったけど。 「伊藤龍星、なに用か」 「はー?身体を気にしてやってんだろ?初めてなのに、無理させたからな。ケツまだ痛いんだろ?」 「バッカ!お前!!なんてこと言うんだ!声が大きい!…痛いけど…何でそんなこと聞くんだ?」 「悪いと思ってるからだろ。次は優しくするって」 次?一瞬心が跳ね上がった。 「次なんてあるか!!生きてきた人生の中で最大の汚点だよ!構うな」 お前に伝わらねぇよな。 伝わるとしたらもっと先か、それか奇跡だ。 「冷たくするなよ。もっと構いたくなるだろ?」 去ろうとしたのに、後ろから抱きとめられてしまう。 振りほどきたいのに出来ない。 嬉しいと思ってしまうからだ。 「離せよ…」 「嫌だね。可愛いな、お前」 「どこが…」 「全部」 顔が近いと思ったらキスされていた。 「ん!?んん、ん〜!!」 舌が入ってきて、危機感を覚える。 ここ、どこだと思ってるんだ。 「や、めろっ!場所考えろ…!人が来るだろ」 「来なかったらいいんだな。こっち来いよ」 「なっ!そういう事じゃない!帰らせろ!」 「もう、無理だ。悪いな、帰してやれねぇ…」 ダメだって…分かってるのにな。 嫌じゃないどころか、期待してしまってる。 最悪…。 溺れそうだ。

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