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「体力ないな(笑)」
「絶倫オバケがよく言うよ!俺は普通だ!もういいな!?帰るからな!」
やられてしまった…!!
腰が癒えたと思ったのに、新たに植え付けられた!!
えげつない…こいつと関わればろくな事がない。
もっと抵抗しろよ俺〜(泣)
「暮沢。気持ち良かった」
「…恥ずかしいことを口に出すな」
最中にほんのりと香る香水の匂いが何を意味するのか分かって苦痛だった。
俺だけなわけないよな。
「帰る」
「一緒に帰んねぇの」
「誰が。やめてくれ、もう疲れてんだ」
校門を出たところで見知った人影を見つける。
「三鈴!!何でいるんだ?」
「充。遅かったな。ちょっと心配になってさ。帰ろう」
何でいるんだろう。けど、ありがたい。
「ありがとう、ちょうど良かった!…伊藤龍星!寄り道するなよ」
告げて三鈴の横を歩く。
「話聞いてたから、心配したろ〜。待ってやったんだから優しくしてくれよ〜」
三鈴が腕を回し、肩を組んでくる。
「いつも優しいだろ〜」
「自分で言うか?(笑)まぁ、そういうところ、嫌いじゃない」
「だろ」
いや、だろじゃない!三鈴の距離が近い!
いつもこんなんだっけ。
こんなに近かったら毛穴が見えそ…。
「なぁ、何でそんな近いんだ?」
「…伊藤龍星が見えなくなるまで」
「え、まさか…」
「少しでも伊藤龍星の目にとめてもらって、不快感を植え付けさせようと思って」
なんかそれって悪いことしてるみたい。
でも…三鈴の作戦なら上手く行きそうだよな。
言葉通り、角で見えなくなると呆気なくパッと身体を離された。
「こんなのであいつに通じるのか?」
「不快感は与えられたんじゃない?お気に入りのおもちゃが他人に取られる感覚は誰にでも起こりうる感情だと思うよ。嫉妬ってやつ」
「ふーん」
とは言ってもこんな作戦が伊藤龍星に通用するのか。
毎日誰かと交流があるみたいだから俺一人ものにできなくったって痛くも痒くもないんだろ?
お気に入りのおもちゃ、ねぇ…。
正直、伊藤龍星が俺に対して特別な感情をもっているのか怪しい。
いつも飄々としてて、ヤルだけやって、からかわれているようにしか思えないのだ。
ましてや、最近目をつけられた俺を?
1人に固執するあいつを想像出来ないのだ。
あまり、手応えを感じていないのだが、実際には伊藤龍星にとって、人生において初めての得体の知れない不快感を感じ腹を立てていたことなんて知る由もないなかったのだ。
「ねぇ、いま暇?」
「龍星くん!?」
「良かったら俺と遊ぼうよ」
「龍星くんがそういうなら…!何する?」
ピトリとくっつく腕がじわりと熱をもつ。
「分かってるくせに…行こうぜ」
その気もないのに、肩に腕を回し、そいつにキスを与えてやる。
あぁ、おかしい。
いま会いたくて、ヤリたくて仕方ないのは別のヤツなのに、エロいことを前にすると、俺はこんなにも簡単に意志とは真逆の反応をしてしまうのか。
自分のいきり立つそれを恨めしげに眺め、その悔しさと苛立ちを発散するようにシたくもない相手にぶつけるのだった。
くそ…俺だって嫌だ…助けてくれッ…。
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