17 / 22
・
…知らながったが、先輩は頭が本当にいいのだ。普段そんな素振りもないのに。分析や思考回路も大人な気がする。
「それもそうか…」
樹生、ごめんな。俺も兄ちゃんも男が恋人だもんな。そんなの嫌だよな。
「難しいな…」
「気にすんなよ。お前が悪いわけじゃない。そのうち乗り越えるきっかけに出会える。それを信じてやれよ。兄だろ」
「そ、そうだよな!?お兄ちゃんだもんな」
何も難しいことじゃなかった。
別に、間違ったことしてないもんな。
男が恋人だったって、間違いなわけない。
よく言うやつだけど、好きになった相手が同性だっただけだもんな。
「先輩、ありがとう…ございます」
「お前がしおらしいと可笑しいな(笑)いつもみたいにタメ口でわーわーしてたらいいだろ。仕方ないよな、ダラしがないから年上に見えなかっただろうしな。生徒会副会長にして乱暴(笑)影で言われてるの知ってるか?」
「ひ、人がせっかく…!くそぉ」
「…単純(笑)充分元気じゃん」
あ、まさか。
また、だ。たまらなく、恥ずかしい。
ダラしがないなんて、そんなわけないだろ。
この人は…やっぱり先輩で大人なんだ。
…この人が、好きだ。
「どした」
「ハッ!あ、いや、ごめん、違う!何でもない」
「…ふーん」
なんか、だんだん居心地悪くなってきたぞ。
逃げてもいいだろうか!
「ごちそうさま。俺、もう風呂入ってくる」
兄ちゃんは食べ終わるなり早々に風呂場へ行ってしまった。
姉ちゃんは…。
「ごめん、充。彼氏に呼ばれてるからちょっと出てくるね」
か、彼氏!!!!
なんでだぁ!2人きりになってしまった!
「お前の兄弟、気が利くよな」
「そ、そうかな」
「さっきから浮ついてね?なんか嬉しいことでもあった?」
「べ、別に?」
カタンと音が鳴る。
「目見て、話せよ。やましいことがあるって勘違いするだろ」
顎を掴まれ、強制的に目を合わせられる。
「あ…いや、別にそんなんじゃなくて…緊張してて、好きな人と家でご飯なんて…」
恥ずかしい…。
こんなことで心配かけてしまうなんて。
「可愛いこと言うなよ、充…なんかしてやりたくなる」
「するなよ…」
「しない。俺のこと信用してもらいたいからな」
それは、信用というより、我慢…。
俺が嫌がることはしたくないっていう…。
そう考えてくれることは嬉しい。
だけど…。
「帰り!送っていく…駅まで。もっと一緒にいたいから…」
「やった。お願い。俺も同じ気持ちだから」
帰り道、夜だからと手を繋いで歩いた。
こんなにも幸せだと思わなかった。
一緒に居ることが嬉しかった。
この関係が永遠に続けばいいのに。
ともだちにシェアしよう!