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君がため 第8話
突っ込む弘人には、もう呆れた溜め息しか出てこない。
出すと拗ねるだろうから、出さないけれど……。
でも――。
「だってなぁー」
言うべきかどうか悩む。不意に見上げた空からは、やさしく光が降りそそいでいた。
――気付かせたのは、彼女。
『だって君とても、お友達と楽しそうに話してるから……』
彼女の言葉に勇気付けられるようにして、ポツリと言葉を吐き出した。
「どう考えてみても、お前といる方が楽しそうだろ」
「えっ……」
『告白』のようだと思った。
固まってるだろう弘人の顔が、見れないなんて。
あの独特の雰囲気を、自分が出してるなんて。
――笑っちまうな。
「納得したか?」
強引に、予想通り呆けた弘人の顔を覗き込んで、俺は再び歩き出した。歩き出してから、たった今、弘人の手が離れた事を意識していた。
今まで握られていた事を嬉しく思う。
引くのではなく、振り払うのでもなく、今まで握られたままだったという事。
それが、なんだか凄く嬉しかった。
「……ところでさぁ、祐志」
なのにこいつは、なんにもわかってない。
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