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しづこころなく 第12話

 割り箸は二つ入っていたらしく、1つを俺に渡す。それを受け取って、俺はそのままベンチに置いたミルクティの缶の上に置いた。 「食わねぇの?」  いっただっきまーす、と嬉々としてさつま芋の天ぷらに齧り付いた弘人が訊いてくる。 「ああ。さっき食ったのと同じモンだし」 「あ、そうか。――お、スッゲー美味ぇ! 祐志んとこって、天ぷらは大量に作る方なの?」 「いや。それは元々父さんの分だ。遅くなるとでも電話があったんだろ」 「えっ。じゃあ今、おばさん1人?」 「ああ」  何を思ったのか、モグモグと口を動かしながら弘人が携帯を取り出す。画面を押して耳へとあてながら、慌てて口の中のモノをゴクリと呑み込んだ。 「――あ、もしもし。おばさん? 俺、弘人です。すっげぇ美味しい天ぷらありがとう」  ……げっ。もしかして今かけてるのって、俺ん家?  驚く俺などお構いなしで、弘人は会話を続ける。 「うん。晩飯は食ったんだけど、コレは別腹。美味いから。今、祐志と夜桜見てて……」

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