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第一章

【第一章】 「叶多、今日俺の部屋でゲームやらない?」 「やるやる。荷物置いたらすぐ瞬の部屋に遊びに行くよ」  友人からの遊びの誘いに笑みを浮かべて返事をすると、下校の人並みに沿うようにして二人並んで歩き出す。 「良かった。昨日届いたんだけど、一人でやってもつまんなくて」 「僕とやっても手応え無くて、つまらないかもしれないよ」 「そんな事ない。叶多とゲームしてるだけで俺は楽しい」  ニコニコしながら話す友人、久世瞬(くぜしゅん)は、育ちの良さを表すように屈託が無く接しやすい。華奢で身長の低い叶多とそう変わらない体型だが…… その快活な性格から、友達も多くクラスの中でもいつも人の輪の中心にいた。そんな彼が、どういう訳かいつも気に掛けてくれるから…… 思いもよらず楽しい生活を叶多はここで送れている。 「ありがとう」  そこまで口には出せない叶多が感謝を込めて礼を告げると、頬を僅かに染めた瞬は、「早く来いよ」と、照れたようにはにかんだ。  小泉叶多(こいずみかなた)が全寮制のこの高校に転入したのは二年生の春だった。私立桐ヶ丘学園は、資産家の子息ばかりが通う名門で、学費もかなり高いらしいが、叶多の家は金持じゃ無い。むしろ ……援助を受けねば暮らせない位日々の暮らしは逼迫(ひっぱく)していた。

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