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 高校を止めて働こうと考えていた叶多の前に、救いの手が差し出されたのは一年生の三学期で。  ―― 本当に、感謝してる。  こうして叶多が通えるのは、この学園の理事長のお陰だと母が言っていた。 『情の深い人なのよ』 とベッドの上で微笑んだ母は、病魔に侵されもう長い事、病院に入院している。  ―― しかも、学費に加えて医療費まで ……。  理事長は、今は亡き父の親友だったという話だが、叶多には会った記憶が無い。いつか会えたらちゃんと礼を告げたいとは思っているが、グループ企業の総帥であり、多忙な彼を見た事は……転入してから一度も無かった。 ***   「やった! また俺の勝ち!」 「あーあ」 「あーあって……叶多全然悔しそうじゃないじゃん」 「うん、悔しいっていうより……僕みたいな下手くそに付き合ってくれるから、嬉しくて」 「……またそんな事言うし」  ゲームはやはり惨敗で、惜しい場面すら無かった叶多は悔しいとも思えないけれど、こうして二人で遊べる事が何より今は嬉しかった。 「叶多はちょっと謙虚過ぎ! 勉強だってトップクラスだし、性格だって優しいし、もっと自分に自信持った方がいいよ。叶多と友達になりたいと思ってる奴、結構いるんだから」 「ありがとう。瞬がそう言ってくれるなら…… 自信、持てるように頑張ってみるよ」

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