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「ホント真面目だなぁ。でも、そういう所が好きなんだけどね」
「ちょっ、なにすっ…… 」
ふざけたように抱き締められて、体がビクリと跳ね上がる。
「ただのハグだよ……ってか叶多ビックリし過ぎ。言っとくけど俺、ホモとかじゃ無いから!」
「違っ、ただホントにビックリして…… 」
「……叶多、お前かなりのビビリだろ」
〝漫画みたいに跳ねてた〟と、腹を抱えて笑う瞬に、何とか頷き返しながらも、叶多の鼓動は早鐘のようにドクドク音を立てていた。
微かに震える指先を…… 気付かれぬように掌を握る。
軽くならば平気だが、叶多の体は触れられる事に拒絶反応を示してしまい、だから、なるべく転入してから当たらず触らずやって来た。
「笑ったら腹減った。そろそろ夕飯行こうか」
そして今……ようやく出来た友達に、打ち明けるだけの勇気は無い。
「うん、僕もお腹空いちゃった」
気付かれなくて良かったと、心の中で安堵しながら、瞬に続いて立った叶多は食堂へと足を進めた。
寮の食堂は一階にあり、自由に座っていい仕組みだが、座る席は大体いつも同じ場所に決まっている。
「叶多は何にする?」
「うーん、今日はうどんにしようかな」
「また麺?たまには肉食べなよ。ただでさえ細いんだから」
「…… 肉はあんま好きじゃ無いんだ」
「好き嫌いは駄目だよ、ほら」
毎度毎度のやりとりに……苦笑しながら叶多が言うと、明るく笑った瞬が無理矢理皿に肉を乗せて来た。
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