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「何故呼ばれたか、分からないって顔だな」  沈黙を破った須賀に、思わず視線を上げた叶多は、緊張の余り渇いた喉を潤す為に唾を飲む。 「はい、僕なんかに何の用事があるのか、分かりません」  出来る限り実直に、今の気持ちを口に出せば、背後に立つ伊東がククッと喉で笑う音が聞こえた。 「じゃあ単刀直入に言う。お前、御園(みその)の犬だったんだろ?」   「えっ?」  その言葉に……一瞬にして頭の中が白に染まり、体中からサッと血の気が引いていくのを叶多は感じる。 「ち……それは、違います」 「嘘を吐いても無駄だ。相当可愛がられてたって情報が入ってる。そうだろ? 伊東」 「そうですね。在籍していた明倭学園では、御園の片腕だったと調べが付いてます。しかも、体を使ってその地位を得ていたとも」 「……っ!」  体を使うというフレーズに、酷い吐き気が込み上げるけど、叶多はそれを何とか飲み込み須賀の顔を正面から見た。 「体なんて……」 「それについては、複数の目撃証言が取れているとの情報が入ってます」 「それはっ」 「下手な言い訳は聞きたくない」  冷静な伊東の声と、蔑むような須賀の視線。  この二人は……少なくとも須賀の方は、自分の話に耳を貸す気など毛頭無いと感じた叶多は、泣きたいような気持になるが生憎涙は枯れている。自分の過去を調べた理由も全く以って分からなかった。例えもし、彼らの言葉が真実だとして何の関係があるのだろう?  確かに……御園家と須賀家の仲は良いとは言えないが、それは財閥単位の話で個人的な恨みなどでは無い筈だ。

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