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「まあまあ……その辺にしておいてあげなよ、須賀会長」
酷く張り詰めた空気の中、間延びしたような伊東の声が後ろから聞こえて来る。先程あれだけ煽っておいて、今度は擁護するような言葉を発する彼も分からないが、この空間に須賀と二人じゃ無い事だけは助かった。
「話が逸れてる。彼をここに呼んだ理由はそれじゃない」
「そうだったな。じゃあ、お前から説明しろ」
「分かった。でも、とりあえず、話が済むまでは居て下さいね」
「……ああ」
やり取りに……さっきの話はあまり関係無かったのかと、憤りに似た感情を持つ。でも、それを表に出した所で届かないのは知っているから、黙って視線を下に移して時が過ぎるのを待つ事にした。
「さて、小泉君は四月に転入して来たから知らないと思うけど、ここの学校は中等部からの持ち上がりが殆どだから、実力があれば一年生が生徒会長になる事もある。ちなみに須賀会長もだけど、前会長も一年生だった。で、生徒会のメンバーになると幾つかの特権が与えられる」
ここまで分かる? と声を掛けられ叶多は小さく頷いた。実力なんて言っているが、結局のところ『家柄が余程良ければ』という意味だろう。
それは以前の学校でも同じような物だった。
でも、暗黙の了解で……御園には誰も逆らえない状況ではあったけれど、制度としての特権は無かったように記憶している。
――まだ、一年生だったんだ。
少し視線を上に向けて須賀の姿を瞳に映し、何も持たない自分との違いに叶多は小さく息を吐く。転入してから直ぐに選挙があったから……分からない内に過ぎ去ってしまい学年までは全く気にしていなかった。
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