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「ちなみに、受け入れた小泉君は部屋を移動してここに住む事になるから。細かい事は追々説明するけど……とりあえず、会長の命令には即対応する事だけ覚えといて」
「はい」
「引っ越しは他の生徒にさせるからいいとして、あとは……須賀会長、何かありますか?」
ずっと足元を見ていた叶多は、伊東の言葉に須賀が舌打ちをしたのを聞いて、更に萎縮してしまう。
この部屋に引っ越すなんて本当に嫌だけど、拒絶しても無駄だろうから黙っているしか出来なかった。
でも、須賀が放った言葉にだけは反抗せずにはいれなくて―― 。
「今後、久世と関わるな」
「な、なんでそんな事っ……それだけは、出来ません」
思わず上げた視線は須賀の真っ直ぐなそれとぶつかって……すぐに逸らしてしまいたくなるけど、叶多は必死にそれを堪えた。
「二度は言わない。お前の意見は聞いてない」
「でもっ……」
「了解しました。久世の方には伝えておきます」
全く取り付く島が無い。
抑揚の無い須賀の声に、悔しさの余り歯を食いしばって伊東の方を振り仰ぐが、こちらも何を考えているのか読み取る事は出来なかった。
「残念だけど、友達ゴッコはオシマイって事かな。言わなくても分かるとは思うけど、どっちから話しかけたとしても、二人のペナルティーになるから」
「ペナルティーって……」
「いわゆる罰だね。内容はその都度主人が決める」
―― 主人って……。
もう訪ねる気力も失せて、叶多は再度視線を彼から自分の爪先辺りに戻す。
主人とか従者とか……いくら百年以上続いている制度だからと言われても、今の時代にこんな事がまかり通るのは絶対おかしい。
だけど、大多数がそういう制度を受け入れている環境の中では、自分の方がマイノリティーになってしまう物なのだろう。
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