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 ―― 学校を、辞めよう。僕が働けば……。 「気に入らないな」  以前と同じ轍(てつ)は踏めないと思案し始めた叶多の頭上から、良く響く低音が思いも寄らず降って来た。ゆっくり視線を上げていくと、いつの間にか移動していた須賀がすぐ傍に立っていて――。 「あっ……」  さっきも同じ事を言われたが、ならば関わらないで欲しい……と、叶多が内心思った途端、頭を片手でガシリと掴まれ無理やり上を向かされた。 「本当に、気に入らない」  見れば見るほど端正な顔は、その言葉とは裏腹に……何の表情も浮かべて無いから余計に恐怖が煽られる。 「あのっ」 「その瞳(め)だ。寄生虫の癖に……何でそんな瞳をしてる。お前、男の出来損いなんだろ? だったらそれらしくしてろ。お前を従者にしたのは御園の犬だったお前が学園を乱さないように見張る為で、特別扱いする為じゃ無い。父親は騙せたかもしれないが、俺は違う。お前みたいな男の腐ったような奴が、一番嫌いだ」  何の情も感じさせない須賀の冷たい声と瞳に、叶多の身体はビクリと強張り同時にカタカタ震え始めた。  ――違う!僕は、そんなんじゃない!  心の声は音にならずに喉の奥へと消えていく。  本当は叫びたいけれど……言っても無駄だと分かっているから、黙っているしか出来なかった。  みんなそうだ。見た目や噂や想像だけで、何でも勝手に決め付ける。自分が幾ら叫んだところで誰にも聞いては貰えない。 「学校を、辞める事も許さない」 「なっ!」  更に考えを見透かされ……目を見開いて声を上げると、整った彼の薄い唇が初めて表情を象った。

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