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「瞬に……逆らうなって言われた?」 「……彼からは、何も言われてません」  図星を突かれ動揺するが、精一杯のポーカーフェイスで叶多は伊東をやり過ごす。食堂でのやり取りから、名前で呼び合う二人の様子が気になってはいたけれど……聞いた所でまともに答えてくれるようには思えなかった。 「そう、まあどっちでも良いけど……荷物はすぐに運ばせるから、チャイムが鳴ったらドアを開けてね」 「分かりました」  言いながら……自分から離れ部屋を出て行く伊東の姿にホッとする。自室がちゃんと与えられるのは正直とても有難かった。  ―― 荷物が来たら、これからの事を考えよう。  いつ戻るかは分からないが、幸いにも須賀は不在で、かなり嫌われているようだから、接触して来ないでくれれば本当に有り難い。  ―― 疲れた。  一日で、色々な事がありすぎて……どう方向を定めれば良いのか今の叶多には分からない。  これからの毎日がどういう物になるのかなんて、想像すら出来ないだけに不安ばかりが募るけど……今まで通り考えられる最悪を思い描けば良いと、叶多は自分に言い聞かせながら足を踏みしめて立ち上がった。  大抵……現実はいつも想像よりも残酷だが、通り過ぎてしまうのを待てば、まだ頑張れる筈だから。

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