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***    それからの一週間は、思っていたより平和に過ぎた。  あの日、須賀の部屋へと荷物を運んで来た生徒の、興味と侮蔑がない交ぜになったような視線は嫌だったが、今の所生活にさほど大した支障は出ていない。須賀とは全く会わないし、持たされている携帯電話もまだ鳴ってはいなかった。  彼は本当に自分みたいな人間が嫌いなのだろう。  誤解されたままだけど、このままの状態が続くのならばそれでいい。瞬とは全く会話が無くなり淋しい気持ちで一杯だけど、彼の為にも今は我慢しなければ……と、思っていた。  ―― 雨……か。  授業中……視線を窓の外に向け、そろそろ梅雨の季節なのだと叶多はぼんやり考える。雨は嫌いだ。低く垂れ込めた暗い雲に、胸が詰まる感じがする。不幸も悲しい知らせも大抵雨と一緒にやって来る。 「小泉君」  考えに深く浸っていると、頭の上から声がして……慌てて叶多が振り仰ぐと、クラス委員長の岩崎が机の脇に立っていた。 「あっ……はい」  いつの間にか授業が終わり、昼休みになったらしい。  最近誰ともまともに話をしていなかった叶多だから、急な出来事に驚いたけど、委員長という事はきっと何か事務的な用事だろう。  どこからどう伝わったのか、叶多が須賀の従者になったという話は、学園中に広まっていて、前以上にクラスメイトから遠巻きにされてしまっているから、爽やかな笑みを向けて貰ってもそんな風にしか思えなかった。だけど、叶多の予想は外れていて。

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