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「変な事させてごめん。一緒にいるの見られたら、会長に睨まれるから……俺、ずっと小泉君と話してみたかったんだ」  長い渡り廊下を通り、第二校舎に入ったところで待っていた彼に話し掛けられて叶多は一旦歩みを止めた。 「え? ……僕と?」 「そう、友達になりたいって思ってた。でも中々話し掛けられなくて……俺、岩崎っていうんだけど」 「知ってます。あの、委員長だから……」  そうでなくてもクラスメイトの名前は全員知っている。 「突然従者なんかにされて、大変だろう?」 「はい、まあ……でも、実際には何も……っ!」  彼に促されるようにして歩き出した叶多だが……ズボンの後ろポケットに入れた携帯電話が震動した為、驚きの余り動きを止めた。 「どうかした?」 「……ううん。何でもない」  訝(いぶか)しげに尋ねられ、叶多は一瞬逡巡するが、すぐに視線を岩崎に戻し、首を軽く振って答える。  ―― ちょっとだけ……話を聞いてから行こう。  呼び出しには直ぐ応じるというルールは分かっているけれど……何故、こんなタイミングで電話が掛かって来るのだろう?  張り詰めていた糸が緩み始め、『もしかしたら、来ないんじゃないか?』と、淡い期待を抱き始めた叶多の心を見透かしたような呼び出しに……応じたく無い思いが強まり、結局電話に出ないという選択肢を選んでしまった。 少しくらい遅れても、気付かなかったと言い訳すれば良いだろうと、浅はかにも思ってしまった。 「ここだよ、入って」  三階の一番奥……生物室のドアを空けながら、岩崎が手招きする。 「うん」  彼の爽やかな笑顔につられ、久々に笑みを浮かべた叶多が先に教室に入った途端、思いもよらず強い衝撃が背後から不意に襲って来て――。

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