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「さあ、誰だろうね?」  馬鹿にしたようにそう告げられ、えもいわれぬ圧迫感に恐怖を感じた叶多は思わず距離を取る為に後退る。 「君は……遊びの駒だ」 「っ!」  愉しそうに口端を上げ彼が放ったその言葉が……まるで何かの合図のように、背後から肩をいきなり掴まれ声も出ない程驚いた。 「やっ……何をっ!」 「いいよ」  叶多の肩を掴んだ岩崎が声を掛けたその途端……ドアの開く音が聞こえ、首を動かし背後を見ると、生徒が数人入って来るのが瞳に映り込んで来た。 「ねぇ、もう会長には抱いて貰った?」  うっすら笑みを浮かべた男に顎を掴まれ震えが来る。  肩を掴む岩崎の手から逃れようと身体を捩るが、逆に両腕を背後に引かれて身動きが更に困難になった。 「そんな事……貴方には関係無い」 しっかり相手の顔を見据えて、精一杯の虚勢を張る。名乗りもしないこの男に、素直に答える義理は無い。 「そっか、思ってたより気が強いんだね。まあ確かに関係無いけど」  入って来た生徒達が自分の周りを囲うのを見て、逃げ出すのは不可能だと叶多は頭で判断した。ならば、この先自分を待っているのは……。 「離してっ」  触れている場所から広がる悪寒に身体がカタカタ震え出す。顎を掴む男の手から逃れるように頭を振ると、少し驚いた顔を見せたがすんなり指は離れていった。 「どうしたの? いきなり震えだしちゃって」 「やっと状況理解したんじゃねーの?」 『おせーよ』と、笑う声は耳に入っては来たけれど、今の叶多はそんな彼等に構っている余裕が無い。

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