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「あれ? 外に見張り置いといたんだけど」
「ああ、それなら自主的に帰って行ったよ」
続いて耳に入って来たのは、久々に聞く伊東の声。
そして……。
「……聞かれた事に答えろ」
間違えようの無い須賀の声に、叶多は瞳を見開いた。
「何って、見れば分かんない? 会長のくれたオモチャで遊ぼうとしてたんだけど……もしかして、駄目だった?」
悪びれずに答えた男が頬を軽く撫でて来る。その感触が気持ち悪くて頭を傾け逃れると、今度は首に手を添えられて喉をキュッと捕まれた。
「っ!」
「護られてない従者は……好きに扱って良い駒だってルールだよね」
―― ルー……ル?
体はまだ震えているが、頭の中は先刻よりも少しは落ち着き始めていて、叶多は男の放った言葉を頭の中で反芻(はんすう)する。
「確かに、昔は暗黙のルールがあったみたいだけど……今は流石にまずくない?」
「そう? てっきりその為の駒だと思ってたんだけど違った? 男嫌いで有名な会長が、誰も納得しない従者を作って傍にも置かない……それって、従者になりたがってた奴らから見たら格好の獲物じゃん」
「もしそうだとしても、これは犯罪行為だろ? こんな事、会長が許すと思う?」
「さあ、どうだろう……ね?」
チラリとこちらを見下ろされ、心臓がまた大きく鳴る。
注意を向けて欲しく無いと心の底から思ったが、そんな些細な叶多の願いは須賀によって砕かれた。
「退け」
消して大きく無い声だったが、弾かれたように周りで叶多を抑えていた生徒達の手が離れて手足が自由になる。
「……あっ」
痺れたように痛む手足を動かそうとしたところで、逆さまに視界の中へと入って来た須賀の姿に、思わず声を上げるけれど……無表情に見下ろす彼から感情はまるで窺えなかった。
「動くな」
乱れたシャツの前を閉じようと震える指で掴んだところで、一言そう声を掛けられ身体がビクリと反応する。
「……でもっ」
いくら自分が従者とはいえ、そんな命令に従うなんて出来ないと思った叶多が、それでも指を動かすと……舌打ちをした須賀に突然左右の手首を掴まれた。
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